谷桃子バレエ団本公演 TMB Company Creation「ALIVE」

谷桃子バレエ団本公演
TMB Company Creation「ALIVE」
 コロナ禍の最中、バレエとは何か、コンセプトを練り人間の普遍的な感情に焦点を絞ることで生まれた公演が行われた。バレエ界では1つのトライアルといえるかもしれない。
 「Lightwarrior」(振付:日原 永美子)はコンテンポラリーなムーヴメントを通じてバレエ・スペクタクルを再構成することを狙っている。馳麻弥を軸に若手ダンサーたちが踊る。ヴィエニアフスキーの楽曲を活かしたシンフォニック・バレエといえる。衣裳の色合いや照明も効果を高めていた。
 続く「TWILIGHT FOREST」(振付:岩上純)は古典「レ・シルフィード」を現代へ翻案しているのだが、キャラクターたちの関係や設定に左右されることなく、現代表現としての視覚的な鮮やかさを大事しながら構成されている。齊藤耀と檜山和久は原作を想い起させる場面を描くが、音楽と共にしっかりとした作品となった。
 「frustration」(演出・振付:石井潤太郎、市橋万樹)ではベテランの牧村直紀を中心に若手たちがダイナミックな動きをみせる。構成は前2作と比べるとややオーソドクスだが、若者たちの演技を楽しむことができる良作といえる。
 ラストの「OTHELLO オセロー〜妻を愛しすぎた男〜」(振付:日原永美子)はシェイクスピアの古典に基づくドラマティック・バレエだ。この作品は各役の心理を現代ダンスの動きと共にどのように作品化するかということが重要となるが心理バレエとしてしっかりとまとめていた。デスデモーナ役の佐藤麻利香とタイトルロールの今井智也の演技、そして三木雄馬の踊りが大きな見所だった。
 歴史のあるバレエ団が新しい時代に向けてさらに発信をはじめている。パンフレットも鮮やかなデザインでトータルなイメージ・チェンジを狙っている。挑戦がはじまっている。
(8月29日、新国立劇場・中劇場)