池宮中夫 - 秋田から東京ビエンナーレまで

池宮中夫は3331 Art Chiyodaにてコラボレーション・パフォーマンスを2021年8月28日に行った。村山修二郎によるインスタレーション「動く土 動く動物」として木の葉による巨大な輪や砂の庭が広がっている。池宮は植物による仮面、緑の衣裳と異界の民のような装いで登場し「動く土 動く植物」がはじまる。会場に壁時計が掛けられているのだが、よく見ていると時間がどんどん逆行し遡っていくという演出になっている。西脇小百合のピアノ演奏と共に男は大地を踏みしめ、文明や神話世界の始原を探るように力強く動く。
 「徒を拾う」2020年10月30日、brick-one)では縁の深い美術家の作品たちが展示をされている中で、その円環を機能させコンテクストを生成していくようなパフォーマンスを展開した。いわゆるインスタレーションから引きづることができる花壇、宙から降り続ける砂のアートなどの中で男が舞う。構成主義的で時にはダダのような荒々しい所作が混じる内容だ。2020年秋になるとコロナ予防をパフォーマンスに混ぜるような作品も登場しだし、池宮が霧吹きからアルコールをひたすら床に吹き続ける場面もあった。
 秋田の鎌鼬の里芸術祭で行われた池宮中夫ソロ「足驅けて稲架けて空だ」(2019年9月21日、鎌鼬美術館)ではコミックな演技が屋外パフォーマンスで喝采を浴びた。竿をもって稲木の上や舞台空間で踊っていた。2000年代の都会派の作風から次第に大地に根差すような作風に変わってきている。
 復刻版『20世紀舞踊』の刊行を経て、池宮はさらに飛躍をしてきている。彼は戦後を代表するダンスのリトルマガジン『20世紀舞踊』を牽引した池宮信夫を父に持つ。ダンサーとして檜健次に創作を、石井みどり折田克子に舞踊を学んだ中夫は多摩美術大学で若き日の中村政人と出会い展覧会を一緒に行う。中村の韓国留学中に池宮も現地で舞っている。やがて村上隆や中村らによる”90年代現代美術”の華々しい台頭と共に展開するアートシーンの中でコンテンポラリーアートとダンス・パフォーマンスをつなぐ役割を果たす。彼に学んだダンサーや美術家、共に活動した才能は多くその足跡と影響が検証されるのはこれからだ。その集大成から目が離せない。