新春の日本舞踊から

 日本舞踊は今年はロシア公演(日本舞踊振興財団)が行われることも話題となり記者会見も行われた。(1月12日)ロシアは歌舞伎が最初に外国で上演された国で日本研究の水準も高い国だ。日本からは花柳寿南海西川扇蔵をはじめ先日五耀会*1で踊った人気のある中堅舞踊家たちや尾上紫といった新鋭作家まで参加する。毎年新人たちが踊るコンクールでもある各派合同新春舞踊大会も盛り上がりをみせた。

日本舞踊協会
各流派合同新春舞踊大会
一月七日第一部

 日本舞踊の新人たちは熱心に活動を重ねている。今年も各流派合同新春舞踊大会は熱気溢れる踊りで盛り上がりをみせた。日本舞踊というと年配の踊り手の活躍のイメージが舞踊ファンの中にイメージとしてあるかもしれないが新人の踊りこそ楽しんで欲しいものである。

 この部の演目の中では藤蔭静寿の長唄「相模蜑」と菊川春美の清元「卯の花」が優れていた。藤蔭は芸○座や創作舞踊市場で活動もする優れた新人舞踊家で洋舞の踊り手ともコラボレーションをすることもある。その一方で古典でも充実した表現をみせる優れた踊り手の一人だ。「相模蜑」は切れ味よく舞ったかと思えば小道具を片手に踊るという表現力が要求される作品だ。海女の表情や様々に貝を描いていくパートで実力を感じさる力演をみせた。一方「卯の花」は御祝儀舞踊として知られる演目だ。立ち姿がきりりとした若手舞踊手が扇を片手に踊るのだがシンプルに切り詰められた動きとメタファーを通じて展開をしていく踊りが印象深い。
 若柳美世英は長唄「まかしょ」でコミカルで人気がある作品に挑んだ。トータルに雰囲気をつかむことが重要だが、その一方で演技力で優れた持ち味をみせていた。さらに岩井寛絵の常磐津「屋敷娘」と西川小扇路「鷺娘」もそれぞれ熱演で印象深く感じた。これからの研鑽が楽しみな二人である。

 明治・大正期と近代日本には洋舞が入ってくるが、日本舞踊は今日でも重要なジャンルだ。昭和初期から戦後にかけて日本の舞踊として日本舞踊とバレエ、そして現代舞踊の3つの舞踊を位置づけようという流れが現れてくる。この3つのジャンルの古典と現代表現をそれぞれ見つめていくことは現代でも重要だ。日本舞踊の現代表現の中にもコンテンポラリーダンスといいうる作品は存在する。また次世代の創作舞踊も楽しみだ。九谷焼の上出長右衛門窯*2が現代美術で注目をされスパイラルや森美術館などで紹介される昨今だが、彼らの現代表現もまた新時代の中で評価されるべきなのだ。
 日本舞踊の若手の舞踊家たちも来日する外来のコンテンポラリーダンスのアーティストや洋舞全般に対して詳しい若者は多い。中堅舞踊家の中には西川箕乃助のようにラバンセンターに学んだこともある才能もいる。古典としてバレエに関心がある舞踊ファンは多いが、その一方で日本舞踊や伝統芸能を見ていく事も大切なことなのだ。
国立劇場小劇場)