グローバル国家と石井漠
カンファレンスの翌日は公演が行われた。重要なことはグローバル化の21世紀に飛躍する台湾という国が日本の現代舞踊の原点である石井漠という存在を大きく評価し応援しているということである。
この国の舞踊史を紐解こう。1945年以前に台湾に戻った李彩娥や石井漠・みどりに学び1946年にこの国で活動を始めた故・蔡瑞月(http://www.dance.org.tw/modules/jp/index.php?page=briefbiography)らが台湾の現代舞踊の第一世代だ。戦後になると戦後世代となるCloud Gate Dance Theater of Taiwanをはじめとするアーティストたちが現れ、そして今日の若手現代作家たちととなる。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100416 ; http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100408)一方、バレエは戦後一時期は社会的要因からあまり発達しなった。ここ近年、この国のバレエやバレエ文化も大きく飛躍してきている。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100720)
台湾ももちろん世代ごとのスタイルや歴史的な要素もあるのだが、戦前・戦後から現代にかけての大きなコンテクストがくっきり示されたステージとなった。
李彩娥舞團2010
「日本現代舞先驅,台日歷史性的焦點舞踊詩人−『石井漠』華麗經典」
(中正文化中心)
台湾の現代舞踊の原点を論じた論文があり、それをルーツとなる石井漠の記念企画の一環として現地で発表をしてきたということは、とても平たく書くと私にとって現代舞踊を論じることは日本のみならずアジアともリンクをしていることになる。4年前に国際会議「Dancing under the Rising Sun」で招聘発表(この時は江口隆哉・宮操子を論じた)をしたときの思い出も連なり、後日詳しく述べるが本当にいろいろ考えた。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20061210)日本の現代舞踊の古典と現代をみながら、同時にアジアの現代舞踊の現代へ連なるということを現地で体験できたことについても考えさせられた。
公演取材のみならず学会など出張というのは国内も国外もそれなりに慌しい。海外にいてもリアルタイムでメッセージがフラットな電子作業環境から入ってくる。現代の舞踊批評家には時には3Dネットワークのようなネットワーク環境を通じた作業(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20090516)も入ってくる。新時代のコミュニケーション基盤、メディア基盤を通じた作業のビジョンも次々に打ちだされてきている。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100925)
日中に現地の人にこの街を案内してもらうことができ実際に街を見ることができた。李をはじめ多くのダンサーたちが活躍をしている。高雄は東京圏で言うと横浜のような大きな港町で台湾第二の大都市だ。台北とはまた異なった趣がある。この街の市民は朝市のため非常に早起きだとガイドブックにあったが確かに皆早起きだ。李は美容体操を朝主婦に教えることをはじめた。
西子湾の近く。中山大学という大学の傍の海辺。この大学は海に面していて世界でも最も見晴らしが良いキャンパスの一つになっているとの事。
元・高雄英国領事館。高台にありこの街ではとても見晴らしの良い洋館として知られている。カフェテリアがある。
澄清湖。庭園になっている郊外の湖。見晴らしが良くとても気持ちが良い。
この国の夜はやっぱりナイトマーケットだ。高雄で最も人気があるナイトマーケットの六合国際観光夜市。公演終演後に立ち寄る。
いずれも石井漠や戦後の潮流を経ながら活動をしているダンサーたちが生きる街の風景だ。