Cloud Gate / White

 不況の最中の東京でCloud Gateを見た。何よりダンサーの表情や踊りが抜群にいい。現代日本のモダン・コンテンポラリーの若手・新鋭舞踊手で、この持ち味―例えば存在感や精神性の高さ、を出せるダンサーはトップクラスの中でもそう多くはないはずだ。バレエ・ファンの中にシルヴィ・ギエムが数年前にLin Hwai-minの振付で踊ったというエピソードを思い出す人も少なくないはずだ。
 2006年に東京で「Cursive II」を見て、その数ヵ月後に台湾舞踊学会の国際会議「Dancing under the Rising Sun」で研究発表を行い、台北国立劇場で彼らのベストセレクションともいえる著名なレパートリー集*1を見て以来(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20061209)、約3年ぶりに生で見る彼らである。個人的には初期の「白蛇伝」(「The Tales of White Serpent」)や「Nine Songs」、「Requiem」、そして近年の「Moon Water」や「Wild Cursive」が好きだ。今回の作品は1998年に初演した作品を2006年に改定したものである。
 彼らをヨーロッパに紹介した批評家の一人が日本でもピナ・バウシュの著作が翻訳されているヨッヘン・シュミットだ。台北国立劇場で彼らの作品が初演されるときはヨーロッパから台湾まで遠路はるばる批評家が見にくる。それぐらいポテンシャルが高いグループである。
→詳しくは某所で。


 大学生の頃は台湾の現代舞踊と接点ができるとは思っていなかった。2004年に私はUCRiverside(カルフォルニア大学リバーサイド校)で次世代を担う大学院生たちが中心になって企画を立てて、UCLAにいるSusan FosterやUCRiversideのSociety of Dance History Scholars(SDHS)系の先生たちらがサポートをしている国際会議”Dance under Construction”(このタイトルもWeb的で当時を思わせる)で研究発表をしている。長年知人だったポルトガル人の研究者と国際空港で待ち合わせたら、ボロボロのライトバンに乗せられてカルフォルニアの青空の下、高速道路をハリウッド映画並のぶっちりの猛スピードでガタピシとつっぱ走られた(しかもこの時、私は助手席にいて天井やドアがガタガタいうのを大丈夫かしらんとみているわけだ・・・)というトラウマが残っているぐらい珍道中だった。*2この国際会議で、客席から石井漠について質問をしていた若き日のある友人と知り合う。
 その三ヶ月後、台北で行われた台湾舞踊史上最大の国際会議でまた再会する。*3この時は会議と自分の研究発表が終わった後、ある台湾演劇の研究者と一緒にドライブをした後、ナイトマーケットに一緒に行った夜のことを今でも鮮烈に覚えている。ライトバンの窓からみた夜の台北のネオンサイン、南国ならではの街並み、ラジオからひたすらに流れ続けるムーディーなアメリカン・ミュージック―そしてその数年後、研究発表で再び訪れ今に至る。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20061210)どれもが大切な私の思い出の一頁たちだ。


Bunkamura20周年記念特別企画
クラウド・ゲイト・ダンスシアター「WHITE ホワイト」

(Bunkamura オーチャードホール)
芸術監督・振付:Lin Hwai-min
出演:Cloud Gate Dance Theater of Taiwan

*1:吉田悠樹彦,「The Tales of White Serpent & Unforgettable Moment of Cloud Gate クラウド・ゲイト舞踊団」,「CORPUS コルプス」 , 書苑新社, No.2, 2007

*2:YOSHIDA,Yukihiko,"Leni Riefenstahl and Her Dancer Age,Particulary from the Dance Criticism from John Shikowski",moderator:Anthea Kraut:UCRiverside Depertment of Dance,Dance Under Construction VI Nomadic Spaces,UC Riverside,April 17,2004

*3:YOSHIDA,Yukihiko,"Establishment of A Collaborative Research Network for Dance Research in Japan",moderator:Roger Copeland:Oberlin College Department of Theater and Dance, Taiwan National University of Arts,CORD/ICKL/WDA,August 2,2004