choreozaurus

Satoko Yahagi Modern Ballet
choreozaurus 第一回発表会

矢作聡子率いるchoreozaurusの第一回目発表会が開かれた。諸事情から第2部後半から会場に着いたのだが、矢作の子どもの作品などもみることができた。第三部は代表的なレパートリーの1つ「楽園」からはじまる。2002年に上演された時は、まだ金井芙三枝舞踊団が存在し、山中ひさのらが出演をしていた。舞踊団がファイナルを迎えるのと時期を前後するように坂本秀子舞踊団と内田香のRoussewaltzがそれぞれシーンに向けて離陸をしていく。矢作もその数年後に自身のグループをスタートし活動を開始する。今回は子ども達のダンスを交えながら改訂をしている。大人のプロのダンサーが踊る現代作品として上演すると、現代作品の代表的演目の1つとして企画に入ることができる矢作の初期代表作の一つだ。教育舞踊としての要素を加味したり、表現教育のような子どものダンスを加えながら、アレンジをしてみせた。故・石井みどり折田克子、金井を経ながら、子どものダンスでも独特な世界を形成しだしている近況を垣間見ることができる。
そんなアーティストはバレエコンクールでも振付で活躍をしだしている。バレエコンクールin横浜 コンテンポラリージュニア部門第一位を受賞し、ローザンヌでも上演された作品も上演された。松久睦が踊った「Northern Lights」だ。光を感じながら少女が踊っていくのだが、ボディのラインや動きの滑らかさ、ダンサーとしての長所が見事に切り出されている。
矢作は今の30代・40代前半のアーティストの中では創作でその能力の高さを早い時点から指摘をされてきた。昨夏、台湾の高雄で作品「A Wandering Egg-Beyond daily life」を初演した時の評判もアジアのダンス関係者の間で極めて高く日本ローカルの文脈に捉われることなく国際的競争力のある作品を送りだす事ができることを明確に示してみせた。その能力を完成させることができれば、この年代の中で創作に関しては第一線を担うことができる才能である。モダン・コンテンポラリーの大枠の流れとして2000年代にシーンをリードしてきた平山素子、能美健志、二見一幸といった才能たちから秋の新国立劇場の企画で新作を発表する20代30代前半の若い新人たちへという流れが明確にでてきている。一時代前の日本ローカルなトレンドから一線を画する新しいタッチ・評価軸が意義を持ってくるはずだ。アジアの若手の作家も優れた作品を送りだしてきているがダンス表現のこれからが楽しみだ。*1

新作の「NightFell」もゲストダンサーとともにみることができたが、エッジのきいた振付とシャープな感覚を堪能できる力作であり至福のひと時だった。フルバージョンでこの秋に初演されるときが楽しみだ。 「A Wandering Egg」や本作を通じて矢作は充実をした近況を示しだしている。批評家として自信を持って国内外へその作品を推すことができる。まさに目の離せない存在といえることができるだろう。

(江戸川文化センター 小ホール)