新年:各流派合同新春舞踊大会

 世間が仕事始めにあたる今日は暖かい晴れた冬の日だった。国立劇場のロビーから見る皇居や東京の自然はいつになく晴れやかだ。今日は各流派合同新春舞踊大会の初日だ。日本舞踊の若手のコンクールであり若手舞踊家がそれぞれに踊った。昨年の様子がネットでみれるようになっている。*1


平成21年各流派合同新春舞踊大会

 各流派合同新春舞踊大会は日本舞踊の若手のコンクールだ。日本舞踊の若い踊り手たちが踊る姿は実に心地よい。元旦の初日の朝にあたる第一部から盛り上がりをみせた。
 初日一部で印象的だったのは西川一右と藤間舞佳だ。西川の長唄「雨の五郎」でが勢いのある演技で長身の男が踊る。男性ならではの力強い表現と踊りに喝采があつまった。一方、藤間の清元「名寄せの寿」は御祝儀舞踊ならではの晴れやかなお祝いの世界だ。新年を祝う気持ちの中にしゃれた風情が身体に現われてくるのがいい。この作品はこの時代の舞踊の名作を1シーンにいれた洒落た踊りでもある。創作では演出を駆使しながら踊るこの踊り手の世界に通じるものがある作品だ。
 坂東加代壽の清元「玉兎」は可愛らしいくてコミカルな世界を盛り上げて見せた。さらに菊川晴美の清元「梅の春」は表情のある踊りが印象的だ。水木歌寿の長唄君が代松竹梅」と藤間洋百合による長唄「藤娘」ではそれぞれ細やかな感受性が心に残る。芸にいっそう深みがでてくるとさらに優れた地平を狙えるはずだ。板東映舞の長唄「新曲浦島」は「新曲浦島」の全幕初演を見ることができたため興味深くみた。古典としてのみならず全幕が初演されたという時代や約一世紀前にこういった作品が生まれたことをイメージしながら自身のレパートリーに練り上げていくと良いはずだ。
 夕方からの第二部では女性舞踊手たちが活躍を見せた。花柳幸舞音の長唄「鷺娘」は実に艶やかな踊りだ。練成をされた表現で立ち姿や演技をシャープに鋭くきめていく。また藤蔭静寿は長唄「菊慈童」で異形の子どもが踊る菊畑を描いた。力強いくっきりとした表現と作家の鮮烈な意識が躍動感のある表現を導きだした。共に若手のグループの創作自由市場で優れた表現を打ち出している。古典と創作の相互に味わいがある新鋭アーティストということがあるだろう。
さらに花柳和まい香の長唄娘道成寺」もこの部の大きな見せ場といえる。ポピュラーな名作を可愛らしい踊り手が踊るのだが、花柳の紋がはいった手ぬぐいを出したかと思えばそこに口紅のあとをつけて女心を描いたかと思えば太鼓を胸につけて踊ったりもする。幸舞音と同じように花柳ならではの江戸趣味の作風だ。創作も気になる存在だ。第二部では藤蔭静寿、花柳幸舞音・和まい香の3人を評価したい。
 さらに水木周猿の荻江「鐘が縁」と花柳喜久美緒の清元「傀儡子」が印象に残った。共に表現力が課題となるが丁寧な仕上がりで交換を持てる。男性舞踊手たちもこの部では健闘をみせたが、男性ならではの迫力ある表現が今一歩であるように感じた。
 伝統芸能や日本舞踊というジャンルで活躍をしている才能だが、優れた資質を持つ才能が多い。広く現代ダンスシーン全般に彼らの才能が紹介されることを祈っている。

国立劇場小劇場)
主催 社団法人日本舞踊協会
後援 文化庁



演芸資料展‐市井の人々の遊び‐
カルタ遊びや双六に注目しながら民衆の視点からみた演芸が紹介されていた。いつも思うのだがこの資料室の展示はイラストとかデザインを勉強している人にとってはヒントになるような図像が多く展示されている。あまりみている時間がなかったので詳細はレポートできないのだが短い時間でもとても楽しめた。
国立劇場 演芸場 資料展示室)


■今日の舞踊界

 同業者は今日から仕事という人も少なくなくどうやら新国立劇場であるオペラ・バレエ企画のニューイヤーオペラパレスガラから”仕事始め”ということになるようだ。今日は寺島ツインズこと双子のバレリーナ、寺島ひとみ寺島まゆみ*2、の寺島ひろみと山本隆之が踊るキトリとバジルに注目が集まっているはずだ。