小牧版 白鳥の湖

 昨年、他界した小牧正英のお別れの会(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20061113)があったことは記憶に新しい。今年は貝谷八百子のブロンズ像の建立式があった。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070809)第一次東京バレエ団の「白鳥の湖」については近年様々な角度から関係者の証言などがメディアなどに出ているが、小牧版「白鳥の湖」は第一次東京バレエ団の時代、ノラ・ケイを招聘した時代、マーゴット・フォンティーンを招聘した時代とそれぞれ振付が異なっているという。今回はその全てを知っている佐々保樹が振付・演出を手がけた。客席には小牧バレエ団のスターダンサーが数人いて、先日見た新年公開のバレエ映画「バレエ・リュス」を想いおこさせた。

 小牧版を知ることがない新世紀世代の私にとってはとても興味深い内容だった。同時代に舞踏、コンテンポラリーダンスを書きたがる批評家は多いが、バレエを書く批評家が少ないというのはあるかもしれない。

 終戦時、都市東京は瓦礫の中から帝劇を遠望できる写真が示すように焼け野原だった。大野晃は東京に当時爆撃による穴がない劇場は2,3しかなかったことを回想する。戦後の舞台芸術は藤原歌劇による「椿姫」と「カルメン」から始まった。江口隆哉は「カルメン」をこの時振付ている。そして昭和21年の8月9日、一年前に長崎に原爆が投下された日、の夕方に「白鳥の湖」が日本初演されるのだ。
山野博大は舞踊批評家の光吉夏弥を通じて小牧と知り合うことになる。当時、山野や小牧らは渋谷界隈で共に食事をしたのだという。(時期を前後するように、山野が江口隆哉を訪れた時には稽古場には金井芙三枝がいた。)そんな渋谷も今ではグローバリゼーションの真っ只中で路上では多国籍なパフォーマンスが行われている。感慨深い一夜だった。


東京小牧バレエ団 小牧正英追悼公演「白鳥の湖」全幕


媒体にてレビュー


(渋谷C.C.Lemonホール)