今月のダンサー:07年8月 鈴木舞さん & 鈴木千琴さん 

(C) Hermanas

フラメンコが社会的にブームになっている昨今だ。バレエ、現代舞踊といったいわゆる芸術舞踊が注目を集める中で、フラメンコは何故か見る書き手が少ない。
 しかし、蘆原英了や光吉夏弥はアルヘンチーナが来日した折にも健筆をふるい、訳稿も発表しているし、デニショーン舞踊団のような民族舞踊(スパニッシュも入っている)をレパートリーに入れている外来の舞踊団の来日にも注意を払っていた。20世紀舞踊の会の世代の批評家たちもフラメンコを長く見続けている批評家は少なくない。1963年ごろ新宿にあった「スペイン」という喫茶店にはフラメンコ気狂いが通いつめたという。

例えば

「その頃ジャズ気狂いは多かったが、フラメンコ気狂いは少数派であり、少数精鋭だと自負していた。」(p.155 市川雅,「舞姫物語」,白水社

なんてフレーズも後世に懐古的に登場する。ちなみに市川はフラメンコも習っていた時期がある。彼のみならず久保正士 http://kubodance.cocolog-nifty.com/ やその師の1人の蘆原がスペイン舞踊を意識するのはおそらくペテルブルク出身の舞踊批評家のアンドレ・レヴィンソン http://en.wikipedia.org/wiki/Andr%C3%A9_Levinson という大きな存在があるからだろう。

 私にとって同時代のフラメンコの踊り手たちとの出会いは、現代舞踊協会の選抜新人公演やアンデパンダン新人舞踊展(現:Dance Plan展)、そして5月の祭典で踊る踊り手たちからだった。現代舞踊というフラメンコからみて他ジャンルとの接点に出てくる若手作家たちの存在には絶えず注意を払い、自分の目を信じてその表現を見てきた。
 それが下に上げる若手作家たちの名前なのだが、実際にはタブラオなどで活動をする踊り手を含めるともっともっと面白い踊り手がいるのである。
 鈴木舞(姉)・鈴木千琴(妹)は舞踊家を母親に持つ姉妹であり、共に優れた踊り手だ。近年、フラメンコ協会や現代舞踊協会でも評価をされつつある。力強くエネルギッシュに踊るのが姉の舞とすると、繊細で丁寧な作品のつくりと踊り方を見せるのが千琴と姉妹でもそれぞれ踊り方がそれぞれ異なる。二人とも客席で楽しみにしている踊り手たちだ。
今回、インタビューをお願いしてみたところ快く引き受けていただいたのでここに紹介する次第である。



参考
写真:右:鈴木舞、左:鈴木千琴
動画映像:鈴木舞「ロンデーニャ」フラメンコルネッサンス21(2004)http://www.kk-video.co.jp/concours/renaissance2004/baire-solo-shorei.html

*質問に対する回答は鈴木舞と鈴木千琴の二人によるものである。


Q1. 鈴木舞さん、千琴さん、客席で拝見していてお二人の踊り方の差を感じます。舞さんはエネルギッシュに情熱的に踊られますが、千琴さんは細やかで丁寧に踊ります。同じ「アレグリアス」や「シギリージャス」でも全く違いますが違いをお互いに感じますか?その違いはどのあたりからくるのでしょうか?


違いは常に感じています。
もともと違った踊りを目指していくつもりは全くありませんでしたが、気が付いたら違う踊りをしていました。姉妹でも性格・体型・好きな踊り手・感情の表現方法が違うので私達にとってはごく自然なことです。


Q2.お二人のフラメンコとであったきっかけをおきかせください。


母親がスペイン舞踊家(曽我部靖子先生)の為、気が付いたら踊りを始めておりましたが、フラメンコを本格的に始めたのは高校生を過ぎたくらいからです。


Q3.スペインにはいらしたことがありますか?いかがでしたか?


団体、単身で数回行ったことがあります。とても大らかでゆったりとした時間が流れていました。しかし、稽古場に入れば一転、緊張感にあふれていました。



Q4.タブラオなどでは踊られるのですか?どの辺りに行けば(一般のお客さんは)見ることができますか?


赤坂のノベンバーイレブンスhttp://www.risingdragon.jp/ 、水道橋のプレステージ http://page.freett.com/pre/ 、高円寺のエスペランサ http://www.esperanza-j.com/ などに出演させていただいています。


Q5.若手の公演などでも踊られていますね。東陽子さんや井山直子さん、田中菜穂子さん、工藤朋子さん、屋良有子さん、末木三四郎さんなど同世代の若手達を見ていていかがですか?


皆さん素晴らしい方々ばかりだと思います。私達ももっと頑張らなくてはと触発されます。


参考ウェブページ:
(下のページから名前を上げているような同世代の作家たちの動画映像をチェックできます。)
フラメンコルネッサンス21(2006):
http://www.kk-video.co.jp/concours/renaissance2006/baire-solo-shorei.html
フラメンコルネッサンス21(2004):
http://www.kk-video.co.jp/concours/renaissance2004/baire-solo-shorei.html


Q6.曽我部靖子先生からの影響はありますか?


勿論あると思います。踊りの基礎を教わったのも曽我辺ですし、昔も今も勉強になることが沢山あります。


Q7.これからやってみたいことなどありますか?


これからももっと深くフラメンコを追及していきたいと思います。


近々の公演情報
9月4日   2007 時代を創る現代舞踊公演
10月28日 赤坂ノベンバーイレブンス  


プロフィール


鈴木舞 プロフィール

1982年生まれ。5歳より母、曽我辺靖子にバレエ及びスペイン舞踊を学ぶ。
その後フラメンコをロサリオ・トレド、イニエスタ・コルテス、ラファエラ・カラスコなど多くのスペイン人舞踊家から学ぶ。
曽我辺靖子スペイン舞踊団員として、2001年第10回日本フラメンコ協会新人公演にて群舞努力賞、2002年全国ダンスコンペティションにてスペイン舞踊特別賞を受賞。2004年2月に東京フラメンコギター合奏団のスペイン公演に参加。
2004年8月に、第13回日本フラメンコ協会新人公演バイレ・ソロ部門にて奨励賞受賞。同年11月に伊藤日出夫フラメンコ歌舞団として中国公演に参加。2005年現代舞踊協会第17回河上鈴子スペイン舞踊新人賞を受賞。
現在、曽我辺靖子フラメンコスタジオ“hermanas(エルマナス)”で講師を務める傍ら、都内のタブラオを中心としたライブ活動や、舞踊団員として数々の舞台に出演するなど精力的に活動している。


鈴木千琴プロフィール

1985年生まれ。3歳より母、曽我辺靖子にバレエ及びスペイン舞踊を学ぶ。その後クラシックバレエ・モダンバレエを経て2003年に渡西、フラメンコを多数のスペイン人舞踊家に学び、帰国後 河野マヤ氏に師事。
曽我辺靖子スペイン舞踊団員として、2001年第10回日本フラメンコ協会新人公演にて群舞努力賞、2002年全国ダンスコンペティションにてスペイン舞踊特別賞を受賞。個人で2000年中野ダンスコンペティションにてスペイン舞踊特別賞受賞。2003年現代舞踊協会第15回河上鈴子スペイン舞踊新人賞を受賞。
2004年に東京フラメンコギター合奏団のスペイン公演に参加。同年11月に伊藤日出夫フラメンコ歌舞団として中国公演に参加。
2005年に第14回日本フラメンコ協会新人公演ソロ部門にて奨励賞を受賞。
現在、曽我辺靖子フラメンコスタジオ“hermanas(エルマナス)”で講師を務める傍ら、都内のタブラオを中心としたライブ活動や、舞踊団員として数々の舞台に出演するなど精力的に活動している。



関連ウェブサイト:フラメンコスタジオ“hermanas”(エルマナス)
http://sogabe-flamenco.vis.ne.jp/
(アドレス変更予定 http://hermanas.weblike.jp/)


写真:(C)フラメンコスタジオ“hermanas(エルマナス)”