新人公演2日目

 今年の新人公演は現代舞踊もフラメンコも興味深い内容だった。二日間とも幕間にサックス奏者の即興演奏と一緒に木許惠介が若手作家たちと舞台でパフォーマンスを繰り広げていた。木許は昨日今日とパフォーマンスの最後のスピーチで「日本ではなにかと外来に資本や客足が集まりがちだが、ちゃんと日本の若手作家がやっていることを見て欲しいし応援して欲しい」といったことをいっていたが、同感である。舞踊に限らず美術全般でも、印象派とか戦後アメリカ美術とか過去の海外の企画展に一般客は足を運ぶことが多いのだが現代美術というのは一定のリピーター層しか集まらないのが実情だ。
 チャコットは昨年若手作家たちのインタビューをネットに掲載したし、(http://www.chacott-jp.com/magazine/topics/58_3.html)このBlogでも私が時折取り上げることがあるが、彼らがこの2000年代後半を生き生み出してくる作品は現実社会を映し出しているわけだから、社会的にもなんらかの形で対話の場が必要なのである。
木許は94歳の石井みどりが踊る彼自身の姿を見て常々ながら「そんなのはもう見たことがある表現だからもっと新しいものをつくれ」と繰り返しいっていたことも回想して語ってみせた。石井はいうまでもなく石井漠舞踊団の戦前のスターダンサーであり、戦前に独立をし作家として名を成していた。戦後も大きく活躍をした大作家である。石井は常に新しい表現に対して自覚的だったことを語るエピソードだ。これから2010年代に向けて社会に巣立っていくであろう次世代の作家たちの先端表現を送り出していく上で、メディアや社会環境の変化を考慮しながら次世代のダンスの為の基盤を戦略的に構築していくことが大切だ。ダンスに限らずどんなジャンルでも5年もすれば表現に対する評価軸やその傾向は次第に変わるが、仮に今から5年10年先を見据えるにせよ身体表現に対する評価軸は今年2008年よりさらに大きく変わってくるはずだ。
 木許は朗らかな表情を持つ身体の大きな踊り手である。近年は折田克子関係の作品や矢作聡子の作品をはじめ多くの舞台で踊っている。暖かな表情とがっちりとした肢体が子どもにも大人にも愛される巨人、名ダンサーである。


現代舞踊協会 通算106回 新人舞踊公演

全労済ホール/スペース・ゼロ提携公演 2日目

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