Conference Paper

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堀場国際会議
ユビキタス・メディア: アジアからのパラダイム創成
—The Theory Culture & Society 25th Anniversary 3日目

 そんなわけでカンファレンスの3日目だ。大雑把に今日までの経過を書いておこう。初日は、フリードリッヒ・キトラーと蓮見重彦の対談があったのだが、いわゆる関係者が多く集まっていたようだ。私は所用で出れなかったのだが、後日内容をチェックできればと思う。(おそらくいつも彼らが言っていることなのだろうといえるだろう)
 会場となった安田講堂に2日目にいっていろいろ感じることがあった。安田講堂というと学生運動の象徴でもあり、舞踊界でもノンポリで稽古をしていた人もいるのだが、中にはいろいろ活動をしていた人もいる。かつてミッシェル・フーコーが来日したときに吉本隆明がここで対談をしたというのがあり、後に吉本はボードリアールと紀伊国屋ホールで対談していたのだが(これは私もその時に会場にいた。ちなみにこの頃は「批評空間」のシンポジウムなんかもありまだデビューをしたての福田和也柄谷行人に絡んでいたり私も見ていて結構面白かった。)、安田講堂でいわゆる代表的な知識人と位置づけられる人が対談をしているというのは見ておいても良かったかもしれないとは思っている。まあ私が入った安田講堂は修理され再び解放されたもので、やはり帝国主義建築に近い空気を感じるのだが。
 2日目の昨日の朝はバーバラ・スタフォードとベルナール・スティグレールのレクチャーから会議に参加した。昔からの知人や懐かしい人とも再会し、時間の流れを感じたりもする。今度、イギリスから出る論文の査読に入ってもらっていたある先生とも出会いご挨拶をする。東京大学というは私にとってはあまり縁がなかったのだが、「4番打者ばかりの野球チームだ」とある研究者がいっていたが、本当にそうで、いい面も悪い面もそれぞれあるがすごい布陣だ。このカンファレンスも、スターがそろいにそろっているので、逆に切り口で斬新さを出したりするのが難しいのではないかとか思っていたのだが、その予想を超えて結構面白い展開を感じていた。
 3日目の今日の朝、台風が東京に向かってきているというのに研究発表をすることになった。会場について自分のセッションに入ってみたら、なんとごりごりの図書館・博物館情報学系のグループの中にいた。こちらが準備していたのは、いわゆるカルチュラル・スタディーズ系のPPTなわけで、大胆にも事例研究と断った上で素材についてたっぷりと話をすることになった。その後、Roundtableに流れて、2時間ほど、欧米のアーカイヴ研究者たちとセッションをしていたのだが、「切り口を出すのが難しい」どころか、実は面白いことをやっているのではないかという核心を持つようになっていた。
 カルチュラル・タイフーンという文化研究系のカンファレンスでは結構大学院生の発表とかもあったので、そういう感じのカンファレンスなのかなと思ったのだが、来ている面々が、国内も国外もいわゆる講師になるようなプロの発表なのだ。海外からもいろいろな司会を呼んでいて、アジア系の研究者たちでわいわい盛り上がっている。
 フロンティアの現場は常に新設領域の工事現場なのだが、まだまだ形にならないものを、皆で話し合って、議論をしていく面白さがある。動物的な勘が働きだして、こことここの話は面白いはずだとか気がついてくるようになる。Roundtableで議論をしたり、Sessionで議論をしていくときに、面白いものを探っていくような感覚が出てくるのである。

 来ている面々は圧倒的に文化研究でもアジア系の研究をしている人が多かった。それにテクノロジーの人が混ざっている。3月にベネディクト・アンダーソンがレクチャーをしたときに、「モバイルなアジアが面白い」といったことをアンダーソンが質疑応答で口走って、その時は個人的にさもありがちなコンセプトをとがっくりしたのだが、このようにいろいろな領域の人があつまって、同じことをディスカッションしていくと、コンセプトでシンプルに束ねてしまっている面白さの様々な方向性が見えてくる。斬新なビジョンを前に提示される感じではなく、じわじわといろいろな人と話をしながら新しい方向性が見えてくるような場だった。

東京大学 本郷キャンパス