清水邦夫、Ort−d.d

清水邦夫と木冬社−劇作家と演劇企画の30年−

閉館間際に通過したのみ。展示されていたポスターのみ閲覧。

早稲田大学 坪内逍遥記念演劇博物館)

東京国際芸術祭2007オープニング作品
Ort-d.d 公演「肖像 オフェーリア」

 シェイクスピアの「ハムレット」に登場する「オフェーリア」を太宰治「新・ハムレット」、「女生徒」、如月小春「DOLL」に着想を得ながら描いた作品。
 会場は建築のフランク・ロイト・ライトによるモダニズム建築で重要文化財だ。古い近代建築にある開明的な空気のある空間だ。私が京都に着いたら良く行く喫茶店に京都で最も古い新々堂 http://www.hi-ho.ne.jp/jan23/kyoto23.htm というお店があるのだが、内装からそんなことを思い出したりもさせられた。会場の自由学園キリスト教系で独自のカリキュラムで運営されている学校とのこと。
 近代日本の若者たちが「ハムレット」に出会い、<開明的なミッションスクールの女学生のイメージ>と、<オフェーリアのイメージ>が重なり合うように描かれていく。美しい物語のみならず、清らかな世界の背景にある抑圧された感情を描かれる。この後者に太宰や如月によるテクストや設定が用いられていく。ポストモダン的な作風が今一歩機能しないが、空間と演技が一体化することで作品はそれなりに見られる。俳優たちの動きが演劇的なクリシェが多く、セリフでは近代的な知識が語られることから、今一歩スピード感や切れ味が欲しいように思う。重なりあうイメージは古典的な主題の翻案といえるのだが、現代ダンスの作家たちが例えばH.R.カオスのように美的に、象徴的に、この手の主題をまとめてしまうことが得意とすることが多いのであれば、同時代の身体表現として、ビジュアルな表現としても強度のある作品をまとめて欲しいものだ。
 
自由学園明日館 講堂)