彩の国ダンスセッション2006

彩の国ダンスセッション2006 埼玉県舞踊協会40周年記念公演
〜呼吸〜

毎冬の恒例の公演の1つ。第39回埼玉全国舞踊コンクールの入賞作品は劇場の演出でかなり印象が異なった作品が多かった。
作家たちの作品の中では上田仁美「赤のフーガ」が劇場空間と照明、美術が合致していて東京新聞の創作部門よりよい作品となっていた。またポストモダン風の藤井香「Breath」では日常風景の中ですごす女性たちが描かれる。一口にポストモダンで日常といっても様々なのだが、演出とダンスが一体化しているのがこの作家の持ち味だ。いつも藤井作品に出演しているダンサーたちが多いので安定ラインを超えて欲しかったのも事実だ。
市川華代「We can't speak・・・」は津田信敏近代舞踊派にいた作家の作品だ。マックス・テルピス=津田の作風というよりはバレエに近いダンススペクタクルである。モチーフと作品の歩み寄りが課題といえる。谷乃梨江「Techno Crisis」は近年健闘を見せているこの作家の好意的な作品だ。ラップトップコンピュータを舞台に置きながらテクノロジーが人間社会にもたらす問題を描こうとする。具体的なモチーフを入れることでより効果を狙える作品といえるが、アンサンブルのまとめ方が次第に伸びてきている。バレエの作品は創作的な作品が多いが、Ballet Preljokajの大岩淑子の作品は少し目立った。この作品は過去に触れたと思うので(記憶違いかもしれないが)割愛する。日本人がバレエスペクタクルをつくると、どうも創作作品のようになったり、和物に走ったりすることがある。21世紀から見てちょっとテイストが古くても厚木凡人や高橋彪のようないわゆる創作らしさがないアートとしての作品を見たくもある。牧阿佐美バレエ団所属の相羽源氏は初めての振付作品「Life with Breeze」を上演した。ある意味、牧にいた人らしいともいえるのだが、上品にまとめながら、バレエテクニックを自覚的に使っている作風には好意を持てた。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)