Dance Venus, 北村真美

今日は表参道、青山、渋谷を言ったり来たり。カフェで仕事をしながら美術専門書店を幾つかハシゴする。雪の日の翌日だったが暖かい一日だった。花屋の店先でディスプレイに見とれたりすることも多々あった。

Dance Vensu presents Studio Ha-Ru Dance Performance 9「冬眠中の動物や植物…その鼓動」として

 今年もDanceVenusは元気にスタジオパフォーマンスを継続している。歴史を振り返れば、定期公演のようなスタイルの原点は津田信敏なのであるが、アスベスト館の定期公演(土方も行っている)などを先行例としてあげることが出来る。この手の舞台を見る楽しみは、やはり参加するメンバーの多様さであり、同時に大きな舞台で使われることになる発想の原点などにもつながるためである。いわゆるアンデパンダン的なよさ、いろいろなレベルの作家を一緒に見るというよさもあり実に勉強になる。
 いつもは流れがあったり、小品集的な要素があるのだが、今回は1つの作品のような流れがあった。今回はなかなか興味深いメンバーで上島雪夫、伊藤拓次、菊池尚子が参加し、加えて武藤容子、山田茂樹、ナオミ・ミリアンと武元賀寿子というレギュラーメンバーが参加するというラインアップだ。白い背景の中に面々が一列に登場すると都心の寒々しい風景が広がる。武元を始め、伊藤や菊池が次第に踊り始め舞台は幕を開ける。伊藤は「火の鳥」で小松あすかや陽かよ子の相手役として踊ったのが印象的だが大劇場ではなく小スペースで見ると繊細な芸術家肌のようにも見える。そんな伊藤と昨年末の地主律子作品でしなやかな肉体美を見せた菊池が二人で寄り添いあい、暖めあうように、動き始める。相互に背中でコンタクトをしあったり、リフトをしあったりと息のあったスピード感豊かな動きが続く。立ったまま動く菊池の足元で伊藤がひざまずくように踊るなど瞬間瞬間が印象的だ。やがてミリアンや山田、上島も加わっていく。ドラマティックに展開をしても良いのだが、今回の舞台ではトリックスターのように武藤が活躍を見せた。武藤は舞台に現れると即興で言葉を発する。昔のテレビドラマの内容や流行歌など各時代を切り取った記号のような言葉が多く客席も反応し笑い声がおきる。やがて白い布に身を隠しながらミリアンがあらわれミリアンのソロがはじまる。布の中に顔を隠しながらはじまるソロでは背景に叙情的な曲が用いられた。大きく身を走らせたかと思えばポーズを見せるといった動きには上島にも通じるショーダンスの要素も強い。その一方で武元のグループのような芸術的な要素も見れる。若干、モダンに近い動きからは加賀谷香に近いような表情も現れた。
 やがて上島が舞台に現れると言葉による即興がはじまる。上島は「私はバレエが好き」と言うとややクサめにバレエのポーズをとる。上島が言葉を発するのははじめてみたが、独特の間合いのある台詞の切れ味は客席に切り込んでいく。作品ではいつもシリアスな要素も見せる作家なだけに言語感覚のポップさが逆に意外だ。そこへ武藤が絡み言葉の掛け合いのような要素も生まれた。休憩中もダンサーたちは舞台に上がり、ポーズをお互いに真似しあうことでかくし芸大会のようなのりをみせる。例えば壁に手をつけるポーズをお互いにまねていく。そのアレンジの仕方を比べあいお互いのネタの広さを競うといった感じで盛り上がりをみせた。
 後半は山田によるヒップホップを活かしたソロからはじまる。リズムをとり、からだを用いながら遊ぶような要素を活かしながら見せていく山田の自然な表情が心地よい。そこにミリアンがジャジーなテイストを活かしながら加わっていく。すらりとした手足をもつミリアンの動きは山田のしなやかな肢体と共にショーダンスを経由したことがある踊り手の持ち味をみせる。実際に今回はこれまでのスタジオパフォーマンスと一線を画しているところがあるとすれば芸術性もあるがそれぞれに身体を純粋に動かして楽しむような世界が色濃く出ているところがある。場面は異なるが菊池が音楽にそってグルーヴ感豊かに踊り始めるようなシーンもなかなか普段の舞台では見れないものだった。実際にそのようなところからアイデアが生まれてくるのも事実でありより作家のナチュラルな感覚を感じたのは事実だ。
コンセプトそのものが芸術公演としてみると若干ぼやけた感触もあったが、ごくごく自然なアイデアは受け取る側のハートにも入ってきやすい部分もある。上島の台詞にもいわゆる芝居のような臭さがなく、むしろショーのような間とリズムのよさでオーディエンスの心に入ってくるという要素を感じ取れた。伊藤と上島がお互いに向かい合いお互いにキスをすると、上島がおもむろに「これがコンテンポラリーダンス!」、「だから考えてはいけない!」と叫んだ言葉には客席も沸いた。テンポアップをしながら踊り手たちのセッションは続き、クライマックスを迎えて終演。
 1つの流れを明快に打ち出したコンセプトの強い舞台というよりは、ダンサーの日常の発想の原点などからストレートにユーモアが入ってくるというテイストだった。いつものこの公演やDanceVenusと異なった持ち味を感じたのも事実だ。

Ha-Ru Studio マチネ)

mami dance world "+-+"

音楽舞踊新聞にてレビュー(予定)

青山円形劇場