次世代ダンス・コンテンツ

 10年前の21世紀になったばかりの頃と社会も時代も大きく変わってきました。メディア1つとってもかつてと大きく異なっています。10年代の若手ダンサーの表現はさらに新しい地平で展開されるはずです。おそらく”コンテンポラリーダンス”という今ではすっかり当たり前になった概念も最後のフェーズになりさらなる新しい表現が出てくるのではないかと私は考えています。

 ダンスと演劇やパフォーマンスの境界線が崩れてきているきているということは、ピナ・バウシュや小劇場系の作品を題材に随分前にいわれてきたことですが、最近では演劇のみならずダンスは映画/映像・ゲーム・インスタレーション・メディア芸術・パフォーマンスとの境界線が自由になってきています。

 数年前からYoutubeのようなDigital Communityがネットワークの表現形態を大きく変えました。最近では昨日紹介したSadler's Wells によるGlobal Dance Contestのようなネットワークを通じたユーザー参加型のコンペティションまで行われています。

 このGlobal Dance ContestではTank Man Tangoのような作品も最終選考に上がっていました。この作品も独特な方法でパフォーマンスや表現の可能性に挑んでいる作品で、なおかつ電子ネットワークを利用して踊り方が公開されたり世界各地でパフォーマンスが行われているというプロジェクトです。( http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20090918 )

 テクストベースのTwitterもダンス界に浸透してきましたが表現でも利用されたりしています。( http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20090727 )
 その一方で、情報を送受信する端末や環境も2次元ではなくなってきました。最近ではサングラス型やモニター型の3次元ディスプレイというのが話題になる昨今ですが、Second Lifeのような3次元環境を使ったダンスコンテンツの配信も行われています。Second Lifeを使ったバレエ団Ballet Pixelleも結成され活動をしています。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20090919

 舞踊家の側のみではなく、舞踊批評家の側に立ってみても似たようなことがいえていて、10年代の初頭においてはBlogやTwitter、そして各種SNSは舞踊批評家にとって様々なアクティヴィティにおいて必要なものです。通常、舞踊批評家というとアナログなイメージで”舞台を見てペンで原稿用紙に原稿を書く”というイメージがあるかもしれませんが、私は2000年代からInternet2のような先端テクノロジーのデモンストレーションや様々なメディアプロジェクトの企画立案・コーディネートを実践的に手がけてきました。舞踊に関する民間のアカデミックなオープンネットワークのモデレーションは10年以上の実践があります。ダンスや映像に関するデータベースの実装などを通じてメディア理論の研究も行いました。
 舞踊批評家にとってのアクティヴィティの現場は2次元のオーサリングソフトやWebのみではなく3次元ネットワークのような次世代メディア環境にもあると自らの経験に基づいていうことができます。

何度かこのBlogで紹介して来ましたが、数年前に日経BP社がSecond Life上で東京をモデルにした3次元コンテンツのバーチャルなデモンストレーションスペースを公開していました。そこでダンス・コンテンツに関するデモを行った時の記録映像が下の映像です。

―ダンス映像を3次元ネットワーク上で展開してみました。

―振付をネットワークを通じてオンラインでアバターに提供できるようにしています。

以上公式チャンネルより引用

 昨年はポルトガルニュージーランドの研究者たちとアメリカの舞踊関係の学会で極めての初期のダンスに関するRoundtableを3次元ネットワークの上で行いました。( http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20090621 )

その時にアーティストによるデモで流された映像が次の映像です。これはSecond Life上で実際にメディアコンテンツとして展開された作品を利用してオンラインで撮影された映像です。

 そして次に上げるのが人気ゲームのファイナル・ファンタジーのトレイラーです。ゲームでもSecond Lifeのような3次元ネットワークを意識しています。

公式チャンネルより引用

 こういったヴァーチャルなコンテンツとライヴのステージを結びつける試みも行われています。これもかつてこのBlogで紹介しました映像です。

 ヴァーチャルなコンテンツを使ったアーティストがダンスアーティストの演出に携わる事も起きています。
内田香さんのRoussewaltzの映像などを手がけているRagaR(戸澤徹+渡邉泰裕)はグループ・アーティストです。以下は先日の内田さんのステージのエンドテロップです。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20091123

戸澤さんが手がけた建築のデモです。Second Lifeのような3次元ネットワークにも通じる要素があります。

そうするとRoussewaltzの作品演出にも通じてきます。

 さらに若手ダンサーはアルバイトなどで活躍する事もありますがPVなども重要なサービスです。最近では若者達は携帯端末でこういった映像をそれぞれ活用しています。


公式チャンネルより引用
このPVのモデルはこのBlogでインタビューを取り上げた池田美佳さんです。

 最後に紹介するのは’はむつんサーブ’のニュースで話題になったマドンナの「4 Minutes」です。マドンナは個々のPVはそれこそフリッツ・ラングの映画から影響を感じるとかいろいろあるし「Re-invention Tour」のクリップとか個人的には大好きなのだけど舞台裏の話が出ているクリップがアップされていたので取り上げてみました。
http://www.youtube.com/watch?v=lVoLtcUaIlM&feature=player_embedded
公式チャンネルへリンク

 一連の流れはダンス・コンテンツの近未来への展望を示しています。ライヴへ、ヴァーチャルへ、その展望は限りなく開けています。