台風、Unit Seek

10月も末なのに台風が東京に上陸しようとしている。例年でいうと9月のような状況。よりによって台風が来ている中、所用でお台場エリアに行く。海風がビルのため強力になり雨でびっしょりになる。海から見る東京は2000年初頭の新鮮さからすっかり再開発が定着してきた印象を受ける。ついこの間、この海の上のボートハウスで菊地尚子たちや深見章代たちがパフォーマンスをしていた(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070527)のを思い出す。水上のパフォーマンスはなかなか心地よかった。


Second Lifeで行われているプロジェクトで舞踊学者・舞踊批評家としてアバターを駆使して活動をしている。(関連ページ:http://www.dance-streaming.jp/sl.html)風力で360度床が回転して風力発電になる建築が存在するのだが、ビル風が強い東京では実現が難しいかもしれない。(http://mapping.jp/archi/2007/10/post_49.html
 
 帰宅して、Second Lifeで見晴らしのいい風景を見ながらリラックス。(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20071022)夜明けの朝日が入ってくる瞬間が心地よい。アンビエントみたいだ。アバターを走らせながらネットをみているとChacottのダンスキューブがモダン=コンテンポラリーの若手作家にインタビューをはじめたようだ。(http://www.chacott-jp.com/magazine/topics/58_3.html)池田美佳、山中ひさのはこのBlogでも紹介をしている。立石樹乃は母親も優れた踊り手だ。母娘ともに四国にいるためあまり東京で見ることが出来ず残念だ。娘の樹乃の方は中村しんじの作品に出ている姿を覚えている。富士奈津子はコンクールなどで活躍してきた作家。最近の大人びた作品はしっかりと基礎を踏まえた作家による表現で成長を経てさらに充実してきた。


Unit Seek Vol.2 自分らしくいること、自分でいること、No Seek No Find

 Unit Seekは金田あゆ子と森田真希によるダンスユニット。金田は若いころから国内外のコンクールやタレントの神田うのとの共演などで活躍をしてきた踊り手だし、森田は近年ではキミホ・ハルバートや佐多達枝の作品に出ている。今回のテーマは愛を知らない、愛され方を知らない母と娘の物語だ。
 冒頭、新聞から昨今の猟奇事件が朗読され、現代社会における人間性とは何かということを作家の側から客席に投げかけられる。母親と男が出会い、娘が生まれ―母親と娘の間で物語が繰り広げられた。金田は人間の深層心理や情念を描きだすことに関心があるようであり、一方の森田はハルバートや佐多の作品で踊るように、作品世界をモダンバレエとして肢体を通じて表現する。この辺りがこの二人のトーンが交じり合う地平なのだろう。会場となったdie Pratzeは小劇場だが、スモークや照明機材を持ち込んで手の込んだことに挑戦をしていた。金田はおそらく青山円形劇場草月ホールなど客席との距離が存在する空間でドラマティックな演出で作品を上演すると、作品性がうまく機能する作家のように思える。一方で森田は普段そのような劇場で楽しむことができるため、今回のdie Pratzeのような客席と舞台の距離が平行線上で距離が近い空間で見ると例え薄い暗闇の中で踊っていてもその存在を知覚することができ、その充実した演技を堪能することが出来る。
 大貫勇輔、福田紗千といった若いバレエダンサーたちがオフステージで見せるような圧倒的なマイクロデバイスでメディアデータを利用したり、ネットワーク越しにダウンロードした音楽をその場でリミックスしてみせるといったメディアカルチャーやクラブシーンの影響下で生きる若者たちのライフスタイルを感じさせる。金田と森田がその世界にすっと溶け込んでいく部分が興味深い。フラワームーヴメントや90年代の70年代の焼き直しのようなポップなその世界は、消費文化の影響の下にありながらも、かつてほど、メジャー対アングラといった対立項の中にないようにも感じる。そんな彼らの日常世界や疑問を演出や台本を通じて<リアル>に打ち出そうとしているのがこの作品だ。といっても、大・中劇場で上演すると機能するような演出が、劇場空間が小さなスペースだと機能をしにくい下りもあり、せっかくの金田の持ち味が前半第一部では演出や構成が上手く機能しにくくなっていたのは事実だ。この劇場では小劇場演劇や舞踏の中でも良い作家たちはかなりつくりこんだ脚本で作品を上演している。近年では橘ちあがこのような状況設定の下で機能するパフォーマティヴな要素のある作品をまとめている。第二部では上に述べたように森田の踊りが充実をしていた。近年の森田は作品のモチーフをより硬質に身体を通じて描くようになった。古典も楽しみだが、モダンで踊る森田は島田衣子のシャープな質感とは違う優しい感覚世界がある。金田はこの作品がおそらく初見だが、ドラマティックな作品やレビューでもその才能を発揮させそうな部分もあるように感じた。これからの課題も多いがその展望が楽しみな二人だ。

(麻布die Pratze)