花・フラメンコ

 昼間はこのところボルテージが上がってきている現代舞踊の中堅作家、井上恵美子のステージ。若手ダンサーたちも育ってきている。


井上恵美子ダンス・カンパニー 「flor・花」


(マチネ  全労災ホール、スペースゼロ)


 その後、赤坂見附のタブラオ、ノーヴェンバー・イレブンス1111へ。出演するのは若き日の曽我部靖子の生き写しのような優れた踊り手といわれる鈴木舞、その妹で明るく情感いっぱいに踊る鈴木千琴(鈴木舞・千琴:http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070815)、同じく実力派の新人の萩村真知子だ。萩村は神秘的ですらりとした立ち姿の美形の踊り手だ。鈴木舞も千琴もそれぞれ年間を通じて様々な場所で踊るが、タブラオで姉妹二人そろって踊るのは久々だ。現在この二人は見るごとに大きな変化があるといわれており伸び盛りのようだ。そこにこれまた人気がありタブラオをはじめあちこちで活躍をしている萩村も加わり会場は満席となった。
 随分前のことだが大野一雄の所に留学していたスペイン出身のある舞踏家は、劇場がついているレストランのオーナーになるんだといって帰国してしまった。今、思えば、スペインにはカフェ・カンタンテという舞台を見ながら食事もできる場があるのだが、彼がいっていたのはタブラオかカフェ・カンタンテのように思っている。広く大衆があつまる芸能が盛んな場である。カフェ・カンタンテの語源は濱田滋郎によればフランス語の「キャフェ・シャンタン」、シャンソンの活躍の場でもあったカフェ、のようだ。シャンソンを愛している文化経済学者の植木浩や故・蘆原英了はキャフェ・シャンタンについても論じている。劇場のみならず街中で優れた踊り楽しむことが出来るのだ。食事をしてお酒を飲んでも、そんなに高くない。こういう場が都心でも増え機能をすると音楽や踊りを志す若者や作家たちにとってもいい場になるように思える。
 タブラオは劇場よりは仲間うちが集まりやすいというが、その表現者の実力もまた良く解る場であり、若手作家にとっては研鑽の場にもなりえると思える。フラメンコの若手作家の踊りを満喫することが出来たそう頻繁には訪れない至福の時だった。

Domingo 10/28 Flamenco

bailaora 萩原真知子、鈴木舞、鈴木千琴
cantaor 那須慶一
guitarrista 鈴木淳

媒体にてレビュー

(ノーヴェンバー・イレブンス 1111)