データで見るコンクール

今年ももう始まったという感触があるのだが、昨年秋から冬にかけてのコンクールのデータを見てみよう。

台湾に行ったこともあり見てみたかったのだが見れなかったのが、あきた全国舞踊祭モダンダンスコンクールだ。コンクールに出るダンサーは大体1つの作品を複数のコンクールに出して年間周っていく。そうすると、場数を踏むことで振り付けや構成を良くした状態の作品を持っていくのは伝統があるコンクールになる。例えば、日本で最も古い東京新聞のコンクールや二番目に古い埼玉のコンクールが最終的に一番いい状態の作品を持っていく場になってくるようだ。
東京新聞は4月、埼玉は7月、間に神戸のコンクールがある。東京新聞の場合、多くの人があちこちを経て練成された作品を出してくるため、東京新聞から新作というケースはそんなに多くないようだ。時には東京新聞から新作というローテーションで動いている作家も見るのだが、他が振付も衣裳も練りに練っている状態で舞台に上げてくるのでそれを考えるといきなり入賞はハードルが高くなってくる。

一方、埼玉は、あちこちを経た作品と新作の2つが相互に入り混じるような印象を持っている。そうすると、あきたはサイクル的にもあちこちを経た作品が入ってくるようだ。
あと、勿論、そのコンクールの持ち味があって、同じ作品でも、構成の仕方や仕上げ方を見ることで、東京新聞なら東京新聞のテイスト、埼玉なら埼玉のテイストを見ることができる。

参考までに年間サイクルを出してみよう。
欠落があったら申し訳ないのだが現代舞踊協会の公演を入れると、4月に東京新聞があったあと、5月に神戸、7月に埼玉、9月に現代舞踊協会の選抜新人公演、中野、11月にヨコハマ、12月のあきた、年明けの3月に現代舞踊協会アンデパンダン選抜舞踊公演である。あきたは年度内最後というイメージもあり、いろんな若者が勝負に出るという印象も受けている。さらにこれに加えるならば、北九州のコンクールと夏の8月の名古屋のコンクールも入ってくるだろう。
大体こんな感じでライターもカレンダーを頭に入れながら動くことになるのだ。


第25回あきた全国舞踊祭モダンダンスコンクール
http://www.izumi21.com/akita/ex25/ex25.html
を見てみた。
データを見た限り、(実は結果は12月に台湾にいたときにアクセスをして知っていた)荒木まなみ(1位)、海保文江(2位)、大竹千春(3位)の結果の結果はなかなか興味深い。荒木は年間を通じてコンクールでも様々なショーケースの作品でも一定の水準の表現で魅せてくれる実に上手い踊り手である。荒木はこのところ創作で伸びを見せている。海保はベテラン、大劇場から小劇場まで幅広く健闘している。実績が出てきているようでとてもいいことだ。大竹のこの作品は優れた作品であり、作家の今後の展開が気になるところといったところか。大竹は中村真知子とならんで二見一幸のダンスカンパニー カレイドスコープ http://www.dance-kaleidoscope.jp/ を代表する踊り手であるため、ファンも多いはずだ。8頭身という恵まれた条件で昔から注目を浴びてきた。
シニアに関してデータを見ていくと、4位の所夏海はなかなかの健闘を見せている。東京新聞、なかのと安定をして高い水準の結果を出せるようになってきたためこれからが楽しみだ。所は内田香のRoussewaltz http://www.kalin-net.com/roussewaltz/j/index.html を代表する女性舞踊手だ。かつては内田の横で吉原有紀が活躍をしていたのだが、若干メンバーチェンジがあったのか、所が女性キャストとしてはステージで健闘を見せている。
コンテンポラリーダンスで脚光を浴びてきている面々もランクインしている。H.ART CHAOSでも活躍を始めている野村真弓は新作で入っているのだが、この作品を私はまだ見ていない。コンテンポラリーダンスのオーディエンスに評価を受けつつあるのが玉田光子だ。玉田の作品も私はまだ見ていないのだが埼玉の作品がとても良かったので見れる日を楽しみにしている。

ヨコハマ・コンペティション
一方、11月に札幌に行ったため見れなかったヨコハマ・コンペティションだが、こちらは地域カラーもある面白いコンクールだ。
今年は部門が変わったようだ。
創作部門 http://www.kk-video.co.jp/concours/yokohama2006/sousaku.html
のデータを見ていると、桑島二美子が1位に入ったようだ。
この作品は何度もあちこちで書いているからここでは割愛しよう。
演出にさらに気を配りながら仕上げたようだ。
注目なのは北島栄・鈴木麻依子のペアだ。2人とも多くの舞台で踊っている踊り手であり、それぞれが主役ができそうなスター性がありながらも職人に徹してシーンを下からも支えているような横顔のある踊り手だ。いわば歴戦の踊り手によるペアといえよう。ちょっと前の冴子の作品には二人とも良く出ていた。北島は創作性で伸びを見せているようだ。一方、鈴木は
ダンサーとしても旬になってきたのか、年間を通じていつみても心地よい。
栗山素子(Ex.Dance Venus)も東京新聞の創作に続けて評価を
受けたようで何よりである。宮川かざみも健闘をしているようだ。
武藤恵津子 「翠葉の香」は初演ではセンターに横田佳奈子が入っていたのだがメンバーチェンジをしてコンビネーションで入賞したようだ。
モダンシニア部門http://www.kk-video.co.jp/concours/yokohama2006/moderns.html
では小林泉が評価を受けたようだ。この作品もすでに書いたためここでは触れないようにしよう。鈴木麻依子の新作が気になるところだ。男性としては白髭真二の新作も面白そうだ。小俣菜穂と伊東由里の若手2人が追い上げ、選抜新人と同じ作品で志村悠子も健闘を見せたようだ。


2つのコンクールの情報を見てみると:

荒木、大竹、所、そして鈴木の活躍が要チェックで、野村、玉田、宮川、さらに栗山の動向が気になるところといったところだろうか。