武元→北村→鈴木

Dance Venus presents はじめの一歩:会その4(リハーサル)

 武元賀寿子のDance Venusによる「はじめの一歩:会」は新人たちが出演するアンデパンダン的な企画だ。舞台経験が少ない、初舞台の踊り手なども登場するため、若々しい踊り手を舞台に上げるときに、例えばこなれてない新鮮な動きといった、ベテランダンサーに出せない味わいをどのように引き出しているかといったことも見ていて興味深い。その一方でいわゆる完成度の高い、次世代を担うような可能性が高い新人たちも作品を発表していた。
 次世代を担っていく新人ダンサーたちの中では白髭真二の作品と皆川まゆむの新作に注目したい。白髭の「a man alive」は音楽舞踊新聞9月21日付の埼玉舞踊コンクールの評でも論じたが、この男性舞踊手のテイストを上手に引き出した作品だ。モダン=コンテンポラリーの若手男性ダンサーの中で、筋肉や骨格の表情が見事に出るタイプの踊り手は実は少ない。確かな表現やムーブメントを見せる踊り手でも、端正な美形ダンサーだったり、素朴な男性舞踊手だったりと、なかなか肉体の作り出す表情の美しさで説得力を見せる作家は少ないといえる。作家は武元のグループ以外では内田香のRoussewaltzや古賀豊の作品でも近年活躍し、チャーミングな女性ダンサーたちとアダージョも披露するのだが、上半身裸の半裸で見せる魅力は、まだこれからの部分があるとはいえとても楽しみだ。今回の上演では黄色系の照明を使いながら、日本人ならではの肌の質感と肉体美を引き出す演出で盛り上げた。コンクールの明るい白い照明とは違う深みを引き出すことに成功をしていた。皆川の新作「Ash」もまた手ごたえのある作品だった。皆川は、小松あすかや陽かよ子らと同じようにヤン・デュローチク「火の鳥」の主役を踊った事がある踊り手だ。このシーズンは日韓ダンスコンタクトで大竹千春らと同じ公演で踊っている。清楚な味わいのある踊り手だが、白塗りにして強い照明の光の中を進むと踊り手の内面が次第に滲み出てくる「白 White・・・」など創作でも面白い作品を送り出してくる芸術家だ。モダン=コンテンポラリーの若手女性ダンサーたちでは、エレガントな大人の女性の表現とくれば所夏海や横田佳奈子、練成をされた技術に基づくシャープな表現であれば荒木まなみ、池田美佳、鈴木麻依子、そして宮川かざみ、個性派は山中ひさのといったところだが皆川や久住亜里沙はそれぞれソリストとしても踊れるが、創作でも独特の感性を持っている作家といえる。灰を燃やすという人間の生や死を象徴するような出来事を作家はなめらかなムーブメントと形象美から描いていく。白髭も皆川もこれからが楽しみだ。
 この舞台ではじめの一歩を飾ったような作家たちの作品には踊り手の”明るさ”や”フレッシュさ”を重んじたスタンダードな作品も多かった。椅子を使いながら佐藤律子が踊る「夜窓」(佐藤昌枝 振付)や内面と振付が作り出す表情に強度がある加瀬谷聖子「私自身あるいは困難な存在」はそれぞれ若々しい踊り手の感性と振付が緊張感のある表現を打ち出すことに成功をしていて見ごたえのある作品となっていた。峯いずみ「ひとりごとのように」ではコート姿の女が叙情的な世界を生み出していたが、いわゆるそれっぽい舞台衣裳の枠組みにとらわれない日常的な演出と作家の表情が的確に像を生み出し作家の意図する想いを表現しきっていたように思う。最近、コンクールなどで肉体と竹ざおを対比させることで簡素な情景を舞台に描き出している山根和剛は円熟した女性ダンサーの岡村愛子と共に「ブルーの中へ・・・、そしてもっとブルーへ」でアダージョを踊ることで新たな素顔を舞台の上で垣間見せていた。
 リハーサルだったが、この企画は見ていて初心の踊り手たちの表情が心地よい会だといえる。この最初の一歩を何度も舞台経験を積んで練成させていくことが重要である。

大井町きゅりあん小ホール)


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mami dance space ひすい色の水

媒体にてレビュー

(マチネ 五反田 Tokyo Design Center GALLERIAHALL)


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金魚(鈴木ユキオ)Re-creative Project 沈黙とはかりあえるほどに

媒体にてレビュー

(月島、TEMPORARY CONTEMPORARY)