大駱駝艦 壷中天公演 娑婆 シムズバレエ

大駱駝艦 壷中天公演 「娑婆」 

 今回の壺中天公演は江戸の夜に現れる蜘蛛女たちの世界だ。今回はバングラディッシュからの留学生MD.Rafi(男性)も参加した。闇の中から爪先で立ち左右に動き回る女たちが現れる。白塗りに和服、ひょうきんでユーモラスな女たちこそが大駱駝艦を担う面々だ。やがてそれぞれが蜘蛛の糸を手にとって踊ったり、妖怪の怪しさをそれぞれに描写をする。それぞれの踊り手がまだ若手ということもあるが、じっと立ち尽くしながら腕を細やかに動かしたり、からだの形をゆがめながら踊るということもあるため、如何に緊張感のある空気を作るかという事が焦点となる。バレエや現代舞踊の若手は同じようなセンチメンタルな曲を用いても肉体を宙に走らせながら空間構成などが明確な作品を踊るということを踏まえれば、彼らとはまた別の切り口で現代ダンスを切り出す必要がある。舞踏の伝統を吸収しながら、現代ダンスへの間口を持つことが1つのポイントであるように感じた。女性舞踏手たちは漆黒の空間を活かしながら首が伸びたり妖しい服をまとったりと東京の闇世界を描写していく。今回の壺中天公演は荒々しさで魅せるというよりは女性的な感性が強く見えるタッチであるのも事実であり、男たちが見せる猥雑で笑いあふれる作風に対して提案があると良いかもしれない。ただし最後の群舞は圧巻だった。白い薄地の衣をまとった女たちが大きくダイナミックに動く。モダンダンスやコンテンポラリーダンスの若手たちがアンサンブルのように見せるの対して、骨太な動きを用いながら踊る。どっしりと下肢で地を踏み、目を白くむき出しながら、ひょっとこの様な表情を見せたかと思えば、ゆっくりと形を崩すように動く。肉体の放つ熱気は空間に充満をしていく。課題もまだまだ多いが新しい世代の感受性を感じさせた舞台だった。
大駱駝艦 壺中天)

シムズバレエ「ESCAPE FROM FREEDOM 〜自由からの逃走〜」


吉祥寺シアター