及川廣信、神蔵香芳、ダンスプラネット

 モダン=コンテンポラリーでは2010年代以後を大きく担うであろう新人たちが台頭しだしているし、小劇場系でもいろいろ新しい流れがでてこようとしている。バレエ界でもこれまでの流れを引き継ぐような感じで島田衣子・西田佑子のように次代を担うプリマたちがでてくると思われるのだが、これら新しい潮流を見ていると及川廣信(http://www.nona.dti.ne.jp/oik/)の「1960年代の幻想と空白」(http://www1.odn.ne.jp/~hechima/texts_and_books_oikawa.html)とオーヴァーラップしてくるように感じることがある。日本社会も90年代と大きく社会構造が変わってしまったが今の20代の若者たちがかかえるエネルギーが社会に放出されてくる日もいずれやってくるであろう。
 今日は及川の公演がシアターXであったのだが、諸事情とスケジューリングの関係でゲネのみみることができた。及川は原点においては小牧バレエでバレエを学んでいたのだが、ブラジスのようなバレエの中のマイム性に関心を持ち、ヨーロッパに渡りパントマイムを学ぶ。当時、マルセル・マルソーは時代を代表するアーティストの一人であり日本の現代舞踊やバレエでも伏屋順二のようにマイムに影響を受けた才能たちは少なくなった。及川の場合、帰国後は舞踏やコンテンポラリーダンスの潮流と密接に接点を持ちながら、パフォーマンスを日本に紹介する上でも大きな役割を果たしたり、ヤン・ファーブルの日本への紹介、若き日の勅使川原三郎との関係など、様々な面で大きな足跡を舞踊界に刻んできた。今日の舞台は本番を見ることができなかったのだが、冒頭での有名なバレエの薔薇の精をマイムを混ぜながら踊ってせるシーンではそのルーツやバレエ東京時代を感じさせたし、マイムやコンテンポラリーダンスでも切れ味のある持ち味をみせていた。ところどころに今でもコンテンポラリーダンスの代表作家たちが使うような振りがでてくるのだが、及川の場合、彼らに影響を与えてきたようなところがあるのでオリジナリティがあるといえる。久々にみた神蔵香芳がいつもようにパフォーマティヴな要素もなく思考を刻みだすように踊っている姿は特に印象的だった。及川は執拗に新しい時代を求めて企画を仕掛け活動を続けている。

 夜は新国立劇場で新鋭作家たちの作品をみる。ここでも次世代を見据えた挑戦がはじまっている。


第8回シアターX国際舞台芸術祭‘08参加 及川廣信作品 “花と紛争”の二次元対立からはじまるパラノイア的構想  ゲネプロ
構成:及川廣信/空間設定:大串孝二/映像設定:加藤英弘/音響:弦間隆/美粧:高塔翠/照明設定:アイカワマサアキ/進行:浅沼尚子
(シアターX(cai))



新国立劇場 DANCE EXHIBITION 2008―Dance meets Music―
2008/2009 Season Contemporary Dance ダンスプラネットNo.28

梅田宏明「Accumulated Layout(蓄積された配置)」(光とダンス)
二見一幸/ダンスカンパニーカレイドスコープ「“形が”“人が”語り始めると」(映像とダンス)
Co.山田うんカッコウ」(生演奏によるダンス)

新国立劇場小劇場)