ウサギたちが・・・

月のウサギ( The Rabbits of the Moon )構成・演出:ほんじょう あつこ 
振付・出演:ほんじょう あつこ & Beni
  
 個人的な事情から女性のメタファーとしての”月”について考えることになった作家による作品。月のうさぎに扮したほんじょうとBeniによるジャズダンスや現代舞踊の創作作品に多い近年で近い作風の作家をあげるとすれば浜田ナツミに近いファンタスティックな作品だ。うさぎが生まれる前、地上で日々、そして現実と夢の間を描きごすというとてもスタンダードな内容である。作舞や構成、群舞もオーソドックスな表現に立脚しているためファンタジー的な作風に落ち着いてしまっているのだが、作家ほんじょうの経験から生まれてきたイメージは濃密なものでそれを表現しきるための形式や振付構成が必要であるように思える。しかし実に見事だったのは照明と演出だった。例えば銀色の薄い衣裳を着た二人が薄暗い光の中で踊るシーンではモノトーンの空間を昨今のライブアートの中でも高い完成度で成立させていた。作家としての経験を積んでいくことが重要であるといえるが舞台全体をトータルにみると興味深い要素がある公演だった。

(千本桜ホール)
音編集:松田孝史
チラシデザイン:asobo.inc
制作:pca dept.