DEEPな奇婦人たち

 世間は来日アーティストのラッシュなのだが仕事で立て込んでいてあまり外来をチェックできていない日々が続いている。変わりにといってなんだがオールジャパンバレエユニオンのコンクールの決戦に顔を出した。


 DaftpunkとかもリミックスしているPerfumeの3人は昨日見た横田佳奈子や所夏海をはじめとする若手スターダンサーたちよりもさらにちょっと若いジェネレーションだということに気がついて軽い衝撃を受けた。Perfumeは池田美佳、米沢麻佑子らと同じぐらいなのだろう。

【懐かしのあのページから】
同時代のダンサー(1)http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070505


UBオールジャパンバレエユニオン コンクール
シニア部門後半、ジュニア(1)部門(スケジュールのため冒頭20曲ぐらいで退出)

 シニア部門の前半は急の所用で見ることが出来なかった。前半と後半の二つに別れて審査が行われていたのだが後半は全部見ることが出来た。斉藤美歩の「エスメラルダVa.」は丁寧な表現がとても印象深かった。また同じ曲を踊った扇春生は艶やかで実に表情豊かな演技が印象に残っている。一方、「ジゼル1幕Va」を踊った大江香織はテクニックに裏打ちされた演技が精神性の高さを描きだすことに成功していた。ダンサーとしての条件に恵まれた竹石玲奈は「オーロラ姫3幕Va.」で身体性を発揮した完成度の高い表現で魅せた。さらに秋元萌が「金平糖Va.」でみせた表現力や浮島優による「海賊(パキータ)Va.」の明るい表情も後半の審査の大きな見所だった。佐々木美緒、新倉さやかは技術が身につけば優れた感性や表現力をさらに発揮できるようになるはずだし、吉越乃杏、加藤春香、林美里は逆に表現力が課題になるだろう。冨山藍は丁寧な踊りに躍動感がでてくると良いところだ。
 ジュニア(1)はほとんどみれなかったが、「エスメラルダVa.」や「黒鳥Va.」のようなシニアの踊り手たちがこなれた演技で踊っている曲を中高生ならではの真剣な演技で踊っている姿に深く感動させられた。緊張感や初心があってとてもいいように感じた。
川口リリアメインホール)




芸術監督:加藤みや子
「三人の奇婦人」


 森嘉子、雑賀淑子、ヨネヤマママコのそれぞれをユーモラスに用いた公演が行われた。今回の公演の芸術監督は加藤みや子だ。第一部では谷川俊太郎の詩をマイムするということで雑賀の琵琶とともにヨネヤマが動くという作品が繰り広げられた。ヨネヤマはダンサーとのセッションのためか、あまりマイムっぽい動きをみせずに、流れるように動いていたかとおもえば、琵琶の音が即興の様に奏でられるのに沿って、その動きのフレーズを崩すように動いていく。空中にモノが浮かんでいるようなマイムならではの表現もこの作家は充分に出来るのだが、それを全面に大きく出さずにアクセントのように用いている。及川廣信やヨネヤマが若かった50年代、60年代は先日他界したマルセル・マルソーが活躍をした時期でもあり、バレエや現代舞踊でマイムに影響を受けた作家も多かった。谷桃子でさえマルソーに魅せられた時期があったのだ。当時の洋舞に対して若者たちは抽象やマイムを武器にして新しい作風を模索していたのである。ヨネヤマは東京教育大学体育学部に在学中に現代舞踊の江口隆哉、大野一雄に師事したがバレエから出てきた及川同様にマイムにとどまり、マイムの作家になったというアーティストである。一般的には舞踏との関連で土方との絡みでコンテンポラリーダンスでは語られることが多い作家だが、ヨネヤマの表現も、マイムといいながらも及川に近似しているのだがもっと自由に身体表現を模索しているようにも感じた。
 第二部の「葛飾北斎の版画より『海と小舟と港のにほい』」と題された作品は、アフロダンスからの影響を感じさせるブルージーで情熱的な踊りというイメージが強い森が邦舞に影響を受けた創作作品を踊った。森が客席に背中を向けながらずっとたっている。その背には色彩鮮やかな着物がかけられている。舞台脇から黒子の木原浩太、岩濱翔平が現れると、着物を二人で空中に吊らす。森の身体は服から離れ、黒一色でゆれるように抽象美を描きはじめる。背後には江東区という地域を意識したのか海辺の音が流れていく。創作らしい実にスタンダードな作品だ。
 最後では「じぐざぐ坂道まわり道」としてお互いの人生遍歴から、70代の成熟した女たちのGirls Talk!、皆が知りたい恋話、がアツくディープに語られ、客席は笑い声で沸き続けた。暖かく朗らかな公演だった。

ティアラこうとう 小ホール)
森嘉子、ヨネヤマママコ、雑賀淑子