透明迷宮

 ダンス・ライターはコックピットの中に座り続けるパイロットたちの様に一人っきりで航路を走り常に孤独である。そんな想いがふと胸をよぎる―サンテグ=ジュペリの「夜間飛行」を読みたくなる。あるいはミッシェル・セール(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%AB)の「北西航路」でもいい。もう、レヴィ=ストロースの「悲しき南回帰線」のような船旅を送ることが無理な時代、およそノスタルジーや優雅な感傷というものがない時代が現代なのかもしれない。電子エクリチュールhttp://web.sfc.keio.ac.jp/~yukihiko/XaS/XaQjp.html)なんて言葉を語っていても、それはサイバティックなシステムの末端でシステムをマニピュレートしているわけでやや味気ない。生成されてくるログやデータの海の中に主体を横たえていく。

 笠井叡高橋悠治の公演を見に行く。間をあけながら見ている上村なおか、笠井瑞丈、アレッシオ・シルベストリン、そして良く見ている横田佳奈子、それぞれの踊りとがっつりと向かい合う。


笠井叡 Dance×高橋悠治 Piano
「透明迷宮」

媒体にてレビュー

(シアタートラム)

(Bプロ)[出演] 上村なおか/笠井瑞丈/アレッシオ・シルベストリン/横田佳奈子