映像データとテクストデータ:続・データで読むコンクール

 いち早くあきたのコンクールの映像がネットにアップされたようだ。映像を見てみて納得、これが映像データとテクストデータの違いである。

映像ページ:http://www.kk-video.co.jp/concours/2007akita-concours/senior.html

 一位の海保文江はいつもはエネルギッシュに踊るのだが、力を抜いて踊りながらも上手さを感じさせる表現力が評価されたのだろう。長年の舞台経験がこの表情を可能にした部分もあるはずだ。二位の大竹千春は実にクールな作風だ。大竹は8頭身といわれるぐらい踊り手として見事な条件でも知られているが、この”ちょっとした奇蹟”は実演で見たかった。フランスからそろそろ戻ってくるはずの松本直子はマッツ・エックからの影響をイメージさせるムーブメントの作品「Cache Cache」を発表しているが、松本の動きも想いおこさせる。大竹が作家としての資質を本当に開花させるとすれば、この作品からどれぐらいボルテージが高い作品を続けて送り出せるかということにかかっているはずだ。三位の野村真弓のこの作品は、過去に2回実演で見ているのだが、おそらくこれが一番の演技のはずだ。野村が創作で見せる作風と演技がこれから融合をはじめることを想像すると本当に楽しみなのだが、作家は海外にいってしまうようだ。金井芙三枝舞踊団がファイナルを迎えたとき(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20060901)、新鋭作家には内田香・飯塚真穂という二大巨星がいた。この二人の凄みは、同年代の作家たちの中でも一目でそれとわかる踊り方を確立しており、それがそれぞれのスタイルとして同世代や下の世代に影響を与えていることだ。野村の踊り方には坂本秀子=飯塚のカラーが色濃いが(一方で現在、金井=内田の延長線上に来る踊りを見せるのは所夏海である)いかにこれまでの作風と距離を取り新しい作風を確立していくかということがその課題になるはずだ。舞踊批評の側でも先行する批評と対峙していくことがなくしては新しい地平が生まれてこないのだが、作家の側もいかに新しい射程を導けるかということが課題となってくる。野村は出世作「Rain」からその才能に期待が集まった作家であった。作家の近未来が楽しみだ。
 いずれにしても映像データでみるとテクストデータ以外にいろいろ解かるためとても便利だ。電子テクスト上の批評活動からこそできることの一つだろう。