Cut In 終刊、 L’Acrobate

 銀座は今日も明るい街だった。銀座で働いたことがある人間は朝の銀座は結構地味ないわゆる普通の日本の街であると知っていると思う。それが午前10時半から11時を過ぎてくると次第ににぎわうようになりいつもの銀座になる。メゾンエルメスでダンス映像の上映があるため銀座に足を運ぶ。行くたびに思うのだが、青山=表参道エリアの方が私にはあっている。しかし銀座だからこその情景があるのも事実でそれも認めざるえない。上映された映像がパリの底辺の人々の生活を描いていたため、明るい路上がまぶしかった。


Dance-ダンスV 「L'Acrobate」
 
 ヌーヴェルヴァーグと戦後フランス映画(ルネ・クレール、マルセル・カポネら)から影響を受けているジャン=ダニエル・ポレ監督によるダンス映画。主人公はパリの公衆浴場で働いているが、タンゴの競技ダンサーに目覚め、売春婦の知人にペアのパートナーになってもらい、ついには競技ダンスで全ヨーロッパの頂点に立つ。「Shall We Dance ?」のように明るさがあるのではなく、そこにはパリの最下層の人々の悲惨な生活が背景に描かれている。主人公はパートナーに結婚を申し込むが、現実志向の女の方は、今の職業(売春婦)から足を洗うために公衆浴場の仕事から転職するように主人公に迫る。
 タイトルからダンスシーンのテクニックや激しさを予想する人も多いかもしれないが、フランスというかスペイン、コルシカ島、イタリアといったロマンス語文化圏のローカルな舞踊文化を感じさせる内容だ。やるせない日々をアルゼンチンタンゴの響きとダンサーのアフォリズムが淡々と彩っていく。一般的な日本人にはラテン的なユーモアがくどい部分があるかもしれないが、味わい深い一本だ。

(メゾンエルメス10階 ル・ステュディオ)


家に戻ってきたら、驚きのニュースが入ってきた。


Cut-In 終刊

長年愛されてきたCut-Inが63号でもろもろの事情から終刊することになった。詳しくは最終号を参照のこと。私も書き始めたときにこの媒体にはとても世話になった。折込などを通じて幅広い人に認知をされていた媒体であるため寂しいニュースだ。