Ballet Preljocaj

バレエ・プレルジョカージュ 「Les 4 saisons…(四季)」

当企画の「N」は評判が極めて良かったようだ。評判をきいてかなり期待をして劇場に向かって見た本作は見る側によって評価が分かれる内容であったように思う。ヴィヴァルディの有名な楽曲にそって展開するこの作品は音楽とダンスというコンテクストから見るとスタンダードな内容だが、バレエというコンテクストから見ると近未来的なセノグラフィーと踊り手の肉体の融合する姿に意義があるだろう。現代舞踊と日常的に接している私からしてみるとムーブメントというよりは美術と肉体のかもしだす像の方が興味深かった。
 透明なビニールの熊の着ぐるみにダンサーが入り登場する。舞台上方にはアルファベットから木、そしてゴミ袋まで幅の広いオブジェが吊り下げられている。時折オブジェが宙から落ちてくるとそれが設定となり次々に情景が変わってく。例えばゴミ袋が落ちてくると、床いっぱいに黄色い中身が広がる。舞台には黄色い粒をからだいっぱいにつけた男が現れ踊り手たちと絡む。また舞台にはヤマアラシのように体中にとげをいっぱいつけたキャラクターや緑色の衣装をまとったニンフのような女性が登場する。軽やかでありながらユーモアに溢れるというフランスでは明確に評価を受けるタッチである。具象でも抽象でもなく作品内容を舞台美術が描く寓意を用いて表現をしていく。しかし作品内容には暖かいファンタジーの要素もある。この肉体と寓意の間にある距離こそが21世紀的であるかもしれない。作品の持つ物語性は小さな物語やナラティヴというよりはファンタスティックな寓話に近い。
 踊り手として抜群の活躍を見せたのはニンフを演じた伊藤郁女だろう。ミドリイロの衣装を来てブリッジをして登場し、起き上がると赤い髪をたなびかせながら個性豊かに情景を描く。黒人や白人など様々な人種の踊り手が客演をする中で的確にポイントをつかんだ演技で観客を魅惑した。


新国立劇場中劇場)