バレエと童心と

スズキ・クラシック・バレエ・アカデミー 第38回発表会

 スズキ・クラシック・バレエ・アカデミーの発表会が開かれた。このアカデミーは多くの優れたダンサーたちを世界へ輩出している。古谷智子(元英国バレエ団)、清水さくら(シンガポール・ダンス・シアター)*1、雨森景子(英国ノーザン・バレエ・シアター、プリンシパル*2、大森和子(コレーラ・バレエ、ファースト・ソリスト) *3が代表的な存在たちだ。ドイツ・ライン・オペラ・バレエで活躍をした滝井真樹子は帰国し教えだしている。新しい新人も国内外に多く輩出している。
 今回の発表会ではオーロラ姫を三浦梢、デジレ王子を今井智也で「『眠れる森の美女』より」を上演した。三浦も今井もこれからが楽しみな新人だがそれぞれ成長を重ね健闘をみせていた。これからを担うことになりそうな男性ダンサーたちも多く出演していたことは見逃せない。
 発表会ならではの子どもから若者までの踊りも多く上演され会場は盛り上がりをみせた。「『ラ・シルフィード』より」といったクラシックならではの作品から「スターズ&ストライプス」と題されたモダンな演目まで楽しむことができた。コンクールなどで活躍をしていくことになるであろう若者たちの踊りの合間に滝井と石井竜一による「『ドン・キホーテ』より」からの“パ・ド・デゥ”や新井望と三木雄馬による「『ライモンダ』よりグラン・パ・クラシック」が織り込まれていたりする。クールな容姿としなやかな肢体を兼ね持つ石井と円熟してきた滝井の踊りは喝采を浴びていたし、期待をされている三木の近況もみることができた。
 特に「不思議の国のアリス」(構成・振付 川喜多宣子)に注目をしたい。ルイス・キャロルはイギリスの数学者・作家だが、子どもたちの活き活きとした表情とバレエならではのベーシックな構成や動きをいかしながら、童心あふれる英国調のバレエ作品にまとめてみせた。技術だけではなくハートを感じる暖かなタッチに”子どもとダンス”というテーマを想い起こさせられた作品であった。
 大人から子どもまで―バレエは多くの人々に愛される。誰もが心に持っている童心とバレエということについて考えさせられた一夜だった。

鎌倉芸術館 大ホール)