現代舞踊と子どものダンス

現代舞踊協会主催
第40回記念ジュニア舞踊公演
第35回記念明日の新人による舞踊公演

 現代舞踊でも子どもとダンスという問題について考えさせられる公演があった。今年は記念公演で過去の優れた作品たちも上演されていた。

 子どもたちの若さとフレッシュさで盛り上げた作品たちが印象的だった。西川菜穂子モダンダンス・スタジオ「夢を探しにでかけよう!」では溌剌とした表情で若い踊り手たちが踊りを披露する。また「光になった あなたへ」はムーブメントや身体が切り出す形象の美しさを感じさせる作品となった。いずれも西川の大人の作品が持つフレッシュな持ち味や快活なタッチが生きている。
 発想で魅せた作品も多かった。モダンダンス森の子クラブ「地球の臍についての一考察」は演出を駆使しながら科学映画のような世界を展開してみせた。窪倉チエ子モダンバレエ研究所「豆・豆・豆〜ナットウダンス」も対象を上手く作品化してユニークさを感じさせた。
 さらにYuriko Dance Artsの「かぜの足跡」はトラッドな構成で白い踊り手たちが踊る作品だが好感を持てた。新鋭作家の菊地尚子の705DanceLabも「ガリ勉ロック」を出品し子ども目線でシニカルに現代社会を風刺してみせた。

 長年の活動を記念して上演された記念作品は秀作が多かった。芸術性で圧倒したのはアメリカン・モダンダンスに通じる作風を持った完成度の高い「共鳴し合うふたつの個」、シャープなムーブメントとモチーフを融合させた金井桃枝舞踊研究所の「鉄錆色の雫」だ。子どもの日常を作品化した稲葉厚子舞踊研究所「おつかい」も朗らかなタッチと優れた構成を持っている作品である。清水舞踊スタジオ「ほたるの里」やモダンダンス森の子クラブ「ペンギンのダンス」は児童舞踊にも通じる持ち味をもちながらも演出や作品展開を駆使して盛り上げるこのジャンルならではの作品たちだ。窪内絹子モダンバレエ研究所「たたらDancing!」は太鼓を使いながら会場全体を盛り上げるなかで子どもたちが劇場いっぱいに踊るという演出が活きた作品といえよう。いずれもこのジャンルに明確な方向性を示すことができる作品たちだ。この伝統をさらに発展させていくことがこれからの課題だ。

 メディアはどうしても大人を対象にした芸術舞踊ばかり取り上げがちだが、このジャンルは近代の唱歌遊戯、童謡運動の時代から発達をし、現代舞踊・バレエ・日本舞踊とそれぞれの領域で今日高度に発達し論じられてきた。指導者にとっても批評家にとっても重要なジャンルである。伝統を踏まえながらその現代性やこれからの展望を考える時期に来ている。

(8月3日・4日 なかのZERO大ホール)