表参道・しノ団
戦前の昭和10年代の映像を見ているとたまに打ち合わせや休憩につかう椿屋珈琲店 http://www.tsubakiya-coffee.com/pride.html のような昭和モダンを感じる。この時代の銀座では戦後初のプリマの松尾明美が東勇作にばったり出会ったことがあるというからこの雰囲気なのだろう。
この日は舞踊批評家協会のミーティングがあったのだが一段落した後に表参道を散策する。銀座と表参道は全く違うのだが、そういう意味では都市空間の変容を感じた。そんなに時間がなかったのだが、ギャラリーとアートショップに立ち寄る。表参道ヒルズのセリーヌのディスプレイが今年はセンスが良く一瞬みとれた。川久保玲の原点は旭日化成時代に店頭ディスプレイをつくったことだというが、自分で実際にそういう仕事をしてみたら面白いかもしれないということをふと思った。
諸泉茂「℃ーPATTERN」
作家は温度計を使ったコンセプチャルな作品を発表している作家だ。温度計をつかって立方体など立体のオブジェをつくってみたり、壁にかけるオブジェを制作している。シュタイナーやボイスと同時代のドイツの抽象彫刻に近い持ち味があり、科学性や物質らしさを感じる作品だ。
過去の作品からずっと温度計を素材にしてきたようでそのあたりに多少変化があっても良いように感じる。例えば同じ気候を測定する装置でもデジタルな測定器などもあるはずだ。1つの表現様式に固執している辺りが残念だが優れた造形作家であるのは事実だ。
(ギャラリー360℃)
このところ表参道に縁があってもいけていなかったNadiffにも立ち寄る。2つ展示があった。
森山大道「記録 第六号」
いうまでもなく戦後日本の代表的な写真家である。個人的には多木浩二や詩人・美術批評家の岡田隆彦と共に「Provoke」を出していた頃の作品が好きだ。後に精神的にまいってしまい休止をして復活した後の写真はそれほど見ていない。久々に展示で見る森山作品なのだが作家特有の都会を切り取るようなタッチは健在だ。
(表参道Nadiff)
Dancecafeの安田敬は写真家だった時代がある。70年代を振りかえって、「あのころ「コンポラ」ダンスフォトといって写真を良く撮ったものだ」と語ることがある。
コンテンポラリーダンスのコンテンポラリーだが、良く「コンポラ」と略される。戦後の日本写真史には「コンポラ」という流れがあるのだが、丁度その時代にダンサーを撮影する時に「コンポラ」といっていたそうだ。
そんなエピソードが胸をよぎる。
そしてもう1人、若手作家の展示があった。
高橋ジュンコ「The Receptionist」
OL、スチュワーデスなどコスチュームに身を包んだ女たちが路上やオフィスでモデルやフィギュアのようなポーズをとっている。そんなある意味狙いすぎなぐらい日本の現代女性像を狙った作家である。映像のトーンは興味深い作家だが素材としての対象に今一歩踏み込めていないようだ。
(表参道Nadiff)
作家HP http://www.junkotakahashi.com/
今度、永島京子 http://www.tokyo-arts.jp/kyokonagashima.html に関する私の評がある媒体から出るが、ダンスを論じているためか、現代美術作家の中でも身体性や女性性を扱った作品があると見ることが多いし、原稿を書くことも多い。永島の作品は矢作聡子や山中ひさの、稲川千鶴、そして所夏海のような踊り手たちが登場しそうでとても興味深い。
ボードリアールの写真論にあるような、現代都市の荒廃とその反面的な美しさといった
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ボードリアールは社会学者だが趣味で日本製のカメラを使って写真をとりはじめたら個展を開くところまでいったという。昔、展覧会で見たがとても美しいプリントだった。
後に取材で浅草に移動。浅草で送ればせながら初詣をする。
永井荷風の「江戸芸術論」
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旧友の一人が会社を辞めて、稼業をついで下町の簪屋になった。舞踊批評家を渡世としている私は日本舞踊を見ることも多い。明治・大正期、そして昭和初期の日本舞踊は花柳界とのつながりもまだ大きい時代だ。その時代を知る人から伝え聞いた、藤陰静江、花柳寿美、林きむといった代表的な踊り手たちがはんぱない美人だったという逸話を思い出した。彼女たちの美しさは花柳界も想わせる現代からみればある種の妖しさなのでもある。
水辺を散策して
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非常に明晰な人だった。
しノ団シグナル
媒体にてレビュー
(アサヒ・アートスクエア)