邦千谷、20世紀舞踊の会

昨日の夜になって連絡があり、今日は邦千谷の関係の会にいってきた。

「ジョイント・ダンス・今から」

 戦後を良く知っている関係者から「20世紀舞踊の会」やそのホスト的な存在
を勤めていた邦千谷の名前を聞くことが多かった。多くの人がパフォーマンスや
戦後のポストモダンダンスにも通じるスタイルを懐古して彼女の舞台について
語っていた。その門下生の系譜の舞台を幸運にも見ることが出来た。
 客席には門下でハルプリンに影響をされた川村浪子の姿もあった。ひたむきに
自分が信じていることを続けることは重要である。そんなことを強く感じた。
 「花・舞」(千葉由美子 作)は70年代的な「環境」を感じた作品だ。雪の
結晶のような白い模型が舞台に2つ置かれている。その横で踊り手が明らかに
ポストモダンダンスから影響をされたムーブメントを見せていく。堀切錠子は
千谷の踊りをモデルネタンツと述べる。邦正美のラバン=邦の表現舞踊からの
影響がそこにある。踊り手の動きは現在のコンテンポラリーダンスと比べると
がっしりとしたモダンのスタンダードともいうべきムーブメントを押さえてい
る動きともいえる。当時の千谷の稽古場の空気を思い浮かべることが出来る。
「沸く沸く庭」(櫻井郁也協力 茗井香保里)では大きな造花が空間に浮かべている
なか、男の子と女性がお互いに自由に動き回る。もしかしたら即興的な
要素も中に入っているのかもしれない。そんなことを思わせるように二人の動き
は自由に反響しあうように構成をされている。シンメトリーなどモダンダンスの
作舞法の基礎的な構造が織り込まれている。ここまでは若干ポストモダン的な
作風だが、次の作品「かたち−広がり」(秦野旬子 作)は正統的なドイツ系の
モダンダンスだ。かつてスザンネ・リンケは同じ邦門下の旗野恵美の稽古場を訪
れたときに「ドイツ本国にも残っていないものがここに残っている」と述べた。
図版で見ることが出来るような、ラバンやルドルフ・ボーデなど1930年代の表現
舞踊を濃密に感じさせる内容だ。3人の踊り手が膝立ちの状態で顔の表情を歪めた
り笑ったりしていく。やがて3人は立ち上がり相互に組み合ったり、隊列を
組んで舞台で動く。この動きはラバンのコーラス舞踊の映像をも思わせる
お互いに組み合ったり、相互に反応をしあうような動きだ。旗野は邦舞踊を
自身の身体訓練法を通じて創作理論にしたり、日本的な演出で発展させた。
その原風景にあたる邦舞踊を濃密に感じさせる。正にラバン=ヴィグマン
と共に作業をしている風景を感じさせるドイツ舞踊だ。ヴィグマンの
影響がある江口系のスタイルやテルピスの影響がある津田系とも違う、原ドイツ
なダンスといえる。やがて2人は床に置かれた布の中に入り、四肢を大きく
広げると人による彫刻のような造形が舞台に登場する。残された1人は
モデルネタンツ(というよりはこの部分のみ若干ノイエタンツに近いが)
を踊っていく。彼女達の若き日の姿や、50年代から60年代にかけての邦舞踊や
門下生達の世界を感じさせた。
 「魂の望むところへ(即興)」では出演者が全員舞台に上がりお互いに手を取
り合って明るく動く。観客を巻き込んで明るく盛り上がった。
語り継がれてきた邦千谷のパフォーマンス的な作品やモデルタンツにおるソロを
思い起こさせる和気藹々とした会だった。
(中目黒GTプラザホール)