埼玉舞踊協会・現代舞踊公演・306

(C) Hiroyasu Daido

この日は3本見た。

埼玉舞踊協会「彩の国ダンス・セッション2005」

高野尚美「雑草」

東洋的情景の作品だ。コロスが舞台に上がっていくと、舞台一面の布の中に踊り手たちが現れ、巨大な大地とその中にたたづむ人間達が描かれる。
やがてオリエンタルな持ち味を活かしたムーブメントと群舞構成でダイナミックなスケールと東洋的な世界世界が綴られはじめる。完成度の高い作品だ。踊りがシーンごとに分かれるのではなく、淡々と描かれていくのは東洋的な論理である。東洋的な曼荼羅などオリエンタルな論理が作品に色濃く見えると良いかもしれない。関口淳子のソロは大胆さを失うことなく、肉体と動きで見せる深みがあった。

栃沢寿美「妖精の庭」

本作は栃沢による創作バレエだ。舞台の幕が上がるとヨーロッパ中世を思わせる幻想的な世界がいっぱいに広がる。カナダ人の男性舞踊手Jeremy Nasmithを軸に色彩豊かなロマンティックな世界をニンフ達が描く。カナダの様な透き通った空気と奥深い森羅を感じさせる要素もあった。埼玉という風土を感じさせる作品でもある。


ナルシソ・メディアナは時間の関係上見ることが出来ず。

現代舞踊公演2005

地主律子・碇山奈奈・Jan Durovcik(キャストB)

音楽舞踊新聞にてレビュー

新国立劇場小劇場マチネ)

306「sudbury」

306:メンバー 辻本知彦 山田茂樹 小嶋藍 柴一平 浅井NOB 木ノ下菜津子 松田尚子 HIROTSUGU SHUHEI ナオミ・ミリアン

写真:(C)大洞博靖

ごく自然に男と女(松田尚子)が掛け合うことからはじまる。日常的な動きからジャジーで艶やかなムーブメントへとつながり作品がはじまる。若い作家のたちの感性が集約された溌溂とした作品である。中でも目を引くのは甘い表情でありながらクールさを失わない山田茂樹だ。ファッショナブルでスノッブな男性達の中でひときわ目を引く。髪をばっちし決めてハイソな日本人男性を描くShuhei、白塗りで頬に赤い涙が描かれている可愛らしくほほえましい舞踏家の浅井Nobなど多様な男性キャストが、クリスマスツリーもおかれたパーティー会場のようなシーンを盛り上げる。女性の中ではBeatnikでも活躍をする松田の切れ味のある動き、トリックスターのように舞台を動きグラスマスな魅力で魅せるナオミ・ミリアンが印象的だ。
一連の情景の中には作為が存在する。1人1人の踊り手たちが震えていく情景があれば、情景が変わるとダイナミックに踊り動く。かと思えば宗教的な音楽が流れる中、男達がじっとポーズを取りとまっている。このシーンには武元賀寿子からの影響も感じさせた。DanceVenusを男性のみでやるとこんなタッチになるような感覚を感じた。1つ1つのシーンを無理なく緊張感を保ちながらつなぐ切れ味がここ近年のコンテンポラリーダンスには少ないものでここちよい。
作家の感性は90年代より新しいものだろう。例えばレイザーラモンHGのギャグを織り込むなど所々に「笑い」が軸として現れてくる。観客も一同に笑うこの「笑い」はコンドルスなど90年代以後台頭したコンテンポラリーダンスに近いものだといえるだろう。しかし90年代的なものの一歩先も感じさせたのも事実だ。
例えばモダン、ジャズ、舞踏と多ジャンルの踊り手が集まっているため、背景の厚い世界が描かれる。似たような例は鈴木ユキオによる金魚X10だろう。金魚のような作風は雑多にいろいろなジャンルの踊り手を混合させることから新しい何かを描き出すという精緻に計算をしない戦略を感じさせる。それがモダンダンスやコンテンポラリージャズをステレオタイプから見ようとしないオーディエンスには受ける。しかし一連の作風は動きや情景、ダンサーの身体性に緊張感がなくタルいのも事実である。
このグループのようにビジュアルでシャープなグループは緊張感があり心地よい。90年代の発条トや珍しいきのこ舞踊団のようにエネルギーで押すという感触ともことなり、その一方でモダン=コンテンポラリーの若手が得意とする抽象的なテーマを描くような作品とも異なる。あえていうなれば内田香のRoussewaltzが目指しているスタイリッシュで成熟した男女のかっこよさに通じるような感性がある。内田が同質な踊り手たちでモダンダンスに依拠しながらも完成度の高い作品を描くとすれば、このグループは雑多な踊り手たちを用いている。時折、内田作品には閉じた現代女性の濃い世界が描かれるが、このグループの場合、より開かれた形でフラッシーでグラスマスな感覚も持たせながらシーンを描いているといえるだろう。
ヴィジュアルで緊張感あふれる作風には共感できるところが多い。
まだはじまったばかりの感覚だが今後の作品が気になる。

(ONES TO WACPH新宿STUDIO マチネ)