アジア・環太平洋とバレエ

 東京シティバレエ団の志賀育恵(http://www.ikue-garden.net/)はオーストラリア・バレエ団(http://www.australianballet.com.au/)で文化庁在外研修で研修をしていたが1年間の日程を終え今月帰国した。その歓迎会が都内で開かれた。(研修の日々の一部は志賀のBlogから読むことができる)


志賀育恵帰国歓迎会

 東京は連日の豪雨に見舞われているこのごろだが珍しく晴れた午後に帰国歓迎会が日比谷公会堂の正反対にあるビルの2Fのレストランで開かれた。歓迎会ではまず志賀育恵本人が挨拶をしオーストラリアでの日々について語った。オーストラリアの持つ自由で開放的な空気とこの踊り手のアクティブな部分が上手く結びつき充実した日々が生まれたようだ。志賀はこの1年で103回も本番を踊ったという。(オーストラリア・バレエ団は2つのユニットがあるが年間180回は本番があるようだ。)また組織としてもしっかりしており、怪我をしたダンサーにも給与がおりたり、セラピーやリハビリといった面でも充実しているといった現地の状況も報告された。バレエ団のディレクターは志賀のことを”ムードのあるダンサー”と評したという。これからの活躍に期待がかかる。会場にはオーストラリアバレエ団のプログラムは研修の日々のアルバムも飾られていた。
 石田種生や安達悦子をはじめ、志賀のこれまでの活動を見守ってきた様々な面々が挨拶をし、志賀のこれからに期待をする声や研修中の日々についての質疑が会場で飛び交っていた。
東京會舘富国ビル店パピオン)


 オーストラリアは数年間のAustralia Japan dance Exchangeではないが、優れた作家が多くいるアジア有数のダンスの拠点である。日本からはみると”コアラと牛肉の国”というイメージしかないだろうが日本の数十倍の大きさのある南半球最大の大陸でありパフォーミングアーツの一大拠点である。(その重要性について80年代に粉川哲夫らが演劇やパフォーマンスでも指摘をしている。*1)私も2004年にオーストラリア・ニュージーランド舞踊学会で研究発表を行い、そのときの論文を向こうの学会誌から出せたのだが、国家がダンスをはじめパフォーミングアーツに対してサポートしている姿勢には驚かされた。また南半球最大の大陸ということもあって、オーストラリアの学会の研究発表なのに同じ南半球の南アフリカの研究者が来ていたり、多文化だが白豪文化が強いということから去年早稲田が招聘していたJanet Landsdaleを始め欧米からそうそうたる面々の舞踊批評家・研究者たちが学会で基調講演をするなどとても進んでいることが印象的だった。
 東南アジア・オセアニアで活躍をする日本のバレリーナも少なくない。ニュージーランドを体験しているダンサーには大滝よう(http://nzdaisuki.com/nature/series/001/002.html)や日本で活動をしている関西の瀬島五月がいる。シンガポールにはH.R.Chaosのシンガポール公演で活躍をした清水さくら(スズキバレエアーツ出身 シンガポールダンスシアター プリンシパル http://www.singaporedancetheatre.com/performance/buts.asp )もいる。バレエでもアジアは重要で興味深い地域である。志賀は研修の日々をBlogでリアルタイムで発信をしてきたが、ある意味では新世紀の情報化とグローバリゼーションの最中の現代日本における最先端のバレリーナの一人であるといえるだろう。(志賀より年代が上になるとBlogのようなメディアを通じて海外からリアルタイムで情報発信というのは少なくなるはずだ。)


 その後、今度はロシアでバレエを学んだ岡本佳奈子のバレエコンサートに足を運ぶ。岡本はこのところ指導者として評価されてきている。特にこの夏に日本バレエ協会の2008サマーコースなどは評判が良かったようだ。キャラクターダンスをはじめバレエの指導者としての才能が社会的に評価されてきている。


ロシア舞台芸術−ギティスバレエ
第4回日ロ交流ロシアバレエコンサート(第2回”ミニアチュールスタジオ”発表会)

江戸川区総合文化センター 小ホール)


 岡本はロシア・バレエ・インスティチュートで学んだ才能だが、CORPUSの最新号でも書いたが*2日本の北海道や環日本海といった地域では、最近では地域性を活かしてロシアと交流をする団も増えているようだ。日本各地で様々に文化交流を行っているようだ。

*1:詳細は吉田悠樹彦,「Australia Japan dance Exchange」,「アヴァンギャルド 1920」, TH Seriries, アトリエサード, No.26, 2006を参照

*2:http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20080827