プレルジョカージュ、平山素子、野坂公夫

 ダンスもそしてダンスを取り巻く世界や環境も大きく変化をしてきている2000年代後半である。規制の枠組みやコンペティションが飽和状態になってきていることを指摘する関係者は少なくないが、私も自分の領域から次世代のダンスとダンス環境を考え論じだしているこの頃である。


 新国立劇場10周年(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20080118)にあたる今年のダンスプラネットのセレクションは、バレエからみたコンテンポラリーダンス、モダンダンスからみたコンテンポラリーダンス、双方のコンテクストからみることができ、幅の広い年代のダンスファンにアピールできる充実した内容である。今の中堅層のライター・批評家たちはそれ以前の蘆原・光吉二大巨頭の時代*1と異なり、”市川雅が蘆原英了の著作(「舞踊と身体」)の後書きを書いた”(http://www2a.biglobe.ne.jp/~ballet/book_9.html)という逸話ではないが、バレエからみたコンテンポラリーダンスを支持していることが圧倒的に多いので、こういう企画を見るとこの二つの異なった立場の相互に向けて現代性を切り出そうとしているセレクションに感謝をしたくなる。
 いうまでもなく、私はこの国の現代舞踊から批評活動を始めた。取り立てて、自分の評をだれそれの系譜と位置づけるようには考えていないのだが、敢えて私自身に似た評者を探してみるとするならば、新世紀初頭を生きる私にとって今日実際に会うことが出来ない舞踊批評家の先人とは光吉夏弥であり、そして"洋舞の批評家の原点"としての永田龍雄であろう。*2そして対象としての舞踊家の側では没後半世紀近い月日が流れているとはいえ”洋舞の原点”としての石井漠、伊藤道郎はじめ江口隆哉・宮操子、津田信敏らは私にとってアクチャルな問題系であり続けているのだ。*3
 プレルジョカージュの作品上演は関係者からも注目されていた。平山素子のこの作品は何度も見ているし(少なくともこの作品は私は3回以上は見ているはずだ)、野坂公夫の作品は初演(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20061021)をみている。平山と野坂はそれぞれ作品のパーツを改訂した部分もあり、上演時のバージョンの違いを興味深くみることが出来た。詳しくはレビューにて。


2007/2008シーズン
2007/2008 Season Contemporary Dance
ダンスプラネットNo.26

アンジュラン・プレルジョカージュ「受胎告知」
平山素子&中川賢「Butterfly」
野坂公夫「曲線(カーブ)した声」 

新国立劇場 小劇場)

*1:吉田悠樹彦,「バレエ史の一頁を札幌で 『オリガ・サファイア生誕100周年記念バレエ・コンサート』を見て」,Danceart,ダンスカフェ,No.28,2008 http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20080116

*2:吉田悠樹彦,「第28回選抜新人舞踊公演」(音楽舞踊新聞,音楽新聞社 2007/12/1)、吉田悠樹彦,「07年 舞踊 <<現代舞踊>> 」(音楽舞踊新聞,音楽新聞社 2008/1/1,11)

*3:吉田悠樹彦,「次世代を担うモダン=コンテンポラリーの若手たち - ダンスコロキウムをめぐって」,「CORPUS コルプス」 , 書苑新社, No.2, 2007