ギャラリー360°吉澤美香 江原朋子 他

ギャラリーめぐりが好きな仲間と共に表参道を歩く。現代美術ばかり見ていた学生時代が懐かしくなった午後だった。

ギャラリー360°エリック・スネル「磁石のドローイング」
ギャラリー360°
http://www.360.co.jp/j/exhibition.html

磁石にワイヤーをつけたというコンセプチャルな作品。いわゆる坂根巌夫が紹介するようなアート・アンド・サイエンス的な作品化というともっとアブストラクトなオブジェといった印象である。自然科学的な思想が現れてくると興味深い作品となるはずだ。
Ono Yokoやボイスを扱っていたことでも知られるギャラリーとのことで展覧会そのものよりはギャラリー全体を見たという印象が強かった。背伸びをしなくてもアートの深部を見せてくれそうなスペースに好感を持つ。
あまりギャラリーで価格リストを見る方ではないが、例えばオスカール大岩のような作家の作品は私も1つほしいと思ってもなかなか手が届かない時がある。Deepな作家の作品を手が届きそうな値段で扱っていることに共感できた。

Art U-room ピナリー・サンピタック「乳房の果実」

その知人がお目当てだったスペースでやっていた展覧会。布を天井からつっているタイプのオブジェと涙の形をした小さなオブジェ。
質感がインターフェイスを感じさ近年の流行を感じる。しかしこれといったヒットはなし。

http://www.mmjp.or.jp/art-u/index.html


吉澤美香展

スペース名が不明だが上の展覧会と同じビルの中で久々に吉澤美香の作品を見た。
ポップなタッチだが背後に美術の知識と伝統的表現が垣間見れる。たまたま久々に
出くわしただけありやや懐かしく思ったのも事実だ。この軽さは戦後の現代美術には
ない持ち味で近年の流行を反映しているように見える。
意義が大きな作家であるのは承知の上だが強いインパクトをかつてほど感じなかった
理由が気になる。

江原朋子「限無」

動きに限りなしということから創られた造語をタイトルにした公演。江原朋子は過ぎていく時間の中に身を浸しながらダンスを見つめているようだ。例年の公演より多くの踊り手が参加したこの舞台は数年前に見た絵画をモチーフにした作品群と比べてみるとアブストラクトな作風である。舞踊劇というよりはスタンダードな構成を使った現代舞踊公演だ。そのタッチが舞台に深みを与えていたということは指摘をする事が出来る。
江原の動きは往年の日々の中で形成をされてきたものなのであろう。自身が振付家であり踊り手でもあるため自身が演じる事に意識が行きがちでもあるが、その動きを多様な年齢層の踊り手に振り付けた。出演していたキャストは石井せつ子や加藤みや子といったベテランから若手まで様々な面々である。造語をされたコンセプトを持つ公演であるため、動きを通じて概念提起があってもよかったような思いもある。例えば若手の初々しい動きにはエネルギッシュさを、ベテランには渋みのある深みをといった様に全体に抑揚をつけることでコンセプトも引き伸ばされ肉体の面白さが切り出されてくるように見える。一連のシーンの中からポストモダン以後の身体像や時間と向き合う事が宿命づけられた踊り手という芸術家そのもののあり方が描かれてくれば作品の深さがより伝わってくるように見えるのも事実だ。
近作のように物語ではないことから思考が肉体に反映されやすいため難しいモチーフであったのは事実である。流れていく時間と向かい合いながら新しいダンスの姿を構想することが重要だ。


(シアターX)