ドナ・ミランダ、ファン・ファンヒ、イ・ソンア、じゅんじゅん

連日の取材で午前中のライブパフォーマンスを見逃してしまった。前日に、昔、私を振付けたことがある旧友と再会を祝っていたこともあった(笑)

ライブパフォーマンス

12:00の深見章代からラストのJouまで見た。

最もインパクトが強かったのは深見と川口ゆいだった。今回、深見は着ぐるみのような服を着て、キャラクターのような格好でソロを踊った。子どもの歌が聞こえる中で、最近、カワムラアツノリらと見せているようなパフォーマンス性の高い動きを見せていく。やがてポワントで立ち、お腹をめくると、臍ピアスに可愛らしいキャラクターがついている。着ぐるみの頭を脱ぐと、ショートヘアの深見が現れる。ピンクのようなメイドやアキバ系といったコンテクストから現代美術との接点を狙ったような作品だ。コンテンポラリーダンスでは人形のような女性像を狙う踊り手も多い。矢作聡子はシュールレアリズムに影響を受けたベルメール四谷シモンのような人形を思わせる表現をすることがある。中村友紀も先月はバービー人形を舞台に山と摘むややアブノーマルな作品で長年のブランクから復活した。だが彼女たちと違うのはこのパフォーマンスでも見せたポップカルチャーとの接点だろう。昨年、このコンペで見せた作品よりごくシンプルで毒のあるパフォーマンスに仕上がったようだ。
 川口は14人限定の「ヒア」(実際には発音記号でhearと書く)というパフォーマンスを行った。小さな部屋に案内されると2列の椅子が置かれている。椅子の上には小さなイヤホンがついたトランジスタラジオが置かれていて、”Sound of Silence”がかかっている。客はイヤホンをつけるようにと指示をされる。イヤホンを皆がつけると、川口が鍛えられた肉体をシャープに動かしながら、時折身を震わせるように動き、ゆっくりと床の上で踊ったり、客と絡み合ったりする。前日の受賞者公演も評判が良かったようだが、一年前のピュアで若々しい印象が大きく変わり、アーティストとしての存在感を感じさせるようになった。
 それ以外では、松田多香子の作品が、より空間と構成を考慮する必要があると思うが目立っていた。まだ感覚的に作家が自身の意識と身体の関係を捉えようとしていることが伝わってくるのだが、ムーブメントの質感の面白さが作品が明確に計算されている部分があるために伝わってくる。完成された状態で見てみたいパフォーマンスだ。
 浜口彩子は前日の受賞者公演の作品を持ってきていた。作家が体調不良のためか出演していなかったのが残念だ。浜口の動きはほうほう堂と重なるときがある。彼女たちの動きは「こども身体」というフレームでもみれるのだが、明るい動きの質感がオーディエンスに受けるのだろう。

 一連のライブパフォーマンスは石川によれば海外を参考にしてはじめたものだという。大らかな空気をその場のノリのようにしてしまう作家も多いのだが、やはりプレゼンテーションの場ともいえるため、構成や演出を空間の束縛があるとはいえしっかり練ったほうがいいかもしれない。客席には世界の様々なフェスティバルのディレクターが来ていたためである。
 また来年も時間がある限り見てみたい。

横浜ソロ×デュオ

ソロ×デュオ部門
出演:ドナ・ミランダ、ファン・ファンヒ、イ・ソンア、じゅんじゅん

媒体にてレビュー

横浜赤レンガ倉庫1号館・3階ホール )