9.11から10年、震災から半年

 9.11から10年過ぎた東京は見事な満月の夜でした。10年前にNYCにいた様々なジャンルのアーティストの回想を思い出しながら一日を過ごしていました。
 3.11から半年が過ぎましたが、現代舞踊では福島出身の振付家の神永宰良の作品が8月に山本直による企画「ダンス創世記」で取り上げられたり、ジャーナリスト・編集者の安田敬が積極的に取り上げられることで注目をされています。福島出身のダンサーを使っている作品でもあり、社会派の内容で論議を呼びそうです。
 コンテンポラリーダンスではNibrollの「This is Weather News」(2010)が東京で上演されました。2010年の作品でありますが、優れたステージの一つでした。
 バレエの「オール・ニッポン・バレエ・ガラ」は非常に励まされるものでした。またこの時期に東京新聞の全国舞踊コンクールチャリティ公演や全日本舞踊連公演で踊られた下村由理恵、島添亮子、堀口純、永橋あゆみによって踊られたロマンティックバレエの名作「パ・ド・カトル」は豪華キャストとそのメッセージ性が話題を巻きました。直接、政治的な内容や社会的メッセージを描いた作品ではないですが、個人的には内田香の「Lycosis」は優れた作品で3.11以後、久々に書く気にさせてくれた作品の一つでした。
この時期は節電のため劇場も普段より暗い印象がありました。そんな中で行われる歌舞伎、日本舞踊の公演も励ましになりました。洋舞が全般的に自粛ムードでしたが、邦舞の方が再スタートが早かった印象もあります。
 美術や演劇でも震災を意識した企画が続いています。将来起きるといわれている震災のことを考えると、東京都慰霊堂に残されている関東大震災の記録が思い起こされ、悲痛な気持ちになります。震災で炎上する帝劇の写真を始め多くの芸能文化に関する史料が展示されています。
 この9月11日は私は某所でステージをみていたので見ることができなかったようですが、文芸批評の柄谷行人が新宿で行われた1万人のデモで演説をしていたようです。

 電子メディアがジャスミン革命や”アラブの春”といった社会現象と密接な接点を持っていることが話題の昨今ですが、私はDeborah Kellyの「Tank Man Tango」(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20090918)が印象に残っています。

戦後の象徴的なシンボルのような存在、ベジャールや近年他界をしたピナ・バウシュカニングハム、プティや大野一雄までも生前に生で触れたことがないジェネレーションが次第に登場してくるでしょう。10年代の若者にとってはコンテンポラリーダンスが若き日の舞踊です。戦後の舞踊がポストモダン、コンテンポラリーという潮流を経てきたと考えるならば、彼らは一生の中でさらに2つ未踏の新しいダンスと舞踊文化に接していくと思われます。現代では世代交代が進み60代から50代後半の批評家たちが”大御所”になってきています。しかしその一方でコンテンポラリーダンスを次第に脱していく事も求められてきています。
9.11で時代が変わりました。そしてその10年後に3.11でさらに時代が大きく変わりました。その一方で舞踊界はどのジャンルも世代交代も重なり、大きく変動をしています。パフォーマンスやダンスのこれからが気になるところです。