ダンスと市場原理

 震災とは別に去年の後半から今年にかけてダンスというクラスターにもソーシャル・ウェブが一層浸透してきました。ネットワークの上での市場原理は日本社会の(俗称)タテ社会、(俗称)ヨコ社会とも異なっています。通常、日本社会はタテに対してヨコを提起して、その中でネットワーク社会というのが語られることがあるのですが、日本的なヨコ社会とネットワーク・ガバナンスはまた別のレイヤーで、ヨコというタテ社会に搾取されるような構造もあるということも重要なポイントです。
 クラスターには中心はないです。オンラインのクラスターのような学科横断的な環境では、良く哲学や表象文化論の関係者がメタ的な存在として中心でありたいと夢想したり、アドミニストレータが政治で中心を妄想することは非常に多いです。日本国内のまず「閉じる」ローカルマーケットにはそういう傾向も見受けられます。しかしローカルマーケットのゆっくりとしたスピードの傍らで世界の潮流は草の根レベルから非常に早いです。所詮「閉じた」ところでせいぜい国内ローカル市場というクールさが大切です。ネットワーク原理と社会原理が非常に近いアメリカでは新しいものを創出していくことが重視され、社会原理とネットワークの原理も近いことからプラスな雰囲気を感じることが多いです。やはり国内でもどんなダンスに関わるカテゴリーで仕事をしていても現場が重要でしょう。活動のプラットフォームはGoogleではないですが、オープンで国境を越えています。エジプトやジャスミン革命ではないですが統制的なガバナンス形態に対してはプラットフォームやインフラから反動が起きてくる時代です。
 まず「閉じる」ことから始まる日本社会なので、この地域に関心がある人がいる限りは一定の経済効果を狙えますが、同じアジアでも中国や東南アジアの伸びが著しく、これまで以上に厳しい状態にあります。タテでもヨコでもどのコンテクストにおいても、そもそも世界の潮流から1クール遅れ目にあるというのが冷静なところといったところでしょう。
ネットワークでユーザーの投票によって行われるダンス・コンペティションが登場したり(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100312)、3Dも含めて新しいダンス・コンテンツや身体表現の形態(http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100313)が模索されている現在です。
 その中でダンス各ジャンルで世代交代が進んできているわけですが、90年代から2000年代まで形成されてきた枠組み、フレームがそもそもすでに時代遅れになっていることもあり、それぞれが動向をうかがうような状況が展開をしています。