牧阿佐美の椿姫

 先月末から今月頭まで行われた公演で注目を集めたのが「牧阿佐美の椿姫」でした。牧阿佐美先生は1999年7月から今年の2010年8月まで新国立劇場の芸術監督まで長い間大切なポジションを支えてきました。

バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

 来シーズンからの新国立劇場の動向が注目を集めていますが、その任期中に多くの成果を新国立劇場バレエ団はみせました。これまでを活かしながら、来シーズンからニューラインアップと共にどのような舵取りを見せるかというところです。どの日に見るか迷ったのですが、私はザハロワの日に見ることにしました。牧先生が歩いてこられた、戦後という良き時代を感じさせる作品と言うことができる作品でした。そこには今日の日本のバレエに多くの面で通じ地平もあります。我々は新しい時代と向かい合いながらこれからのさらなる未踏の10年、そしてこれまでの10年を考える時期に立っているといえます。

新国立劇場バレエ団「牧阿佐美の椿姫」
マルグリット:スヴェトラーナ・ザハロワ
アルマン:デニス・マトヴィエンコ
(7月1日 新国立劇場オペラ劇場)

10年前の”バブル崩壊後でも豊かな生活”といったイメージから現代の社会生活は大きく変わってきています。またその一方で日本を取り巻く国際社会の中ではアジア経済の伸びが著しいです。劇場にもそういった空気が反映されてきているようにも感じられる昨今です。来年は帝国劇場開幕から数えて洋舞100年という節目ですが、邦と洋という枠組みに捉われずこの国の舞台芸術の未来を構想する時期とも言えるでしょう。