10年代のダンス:台湾(2)

 先日、英国のダンス組織Sadler’s Wellsがインターネットを通じて投票可能なダンスコンペティションGlobal Dance Contest( http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100312 )を実現させたことを紹介したと思います。その最初の優勝者はアジア人のダンサー・振付家でした。Shu-Yi Chouといい、先日紹介したHuang Yi( http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20100408 )と同じ20代の台湾の若きダンサー・振付家でした。今年の秋に新国立劇場の企画で新作をリリースする高瀬譜希子・山口華子・池田美佳と同年代のアジアの才能達です。10年代をリードするアジアのダンス作家の一人といえるでしょう。

“It’s the first year that the venue has showcased the winner of its online global dance contest. And it’s the 26-year-old Taiwanese choreographer Shu-Yi Chou, who made Sampled this year with his lively and engaging work. You can see why [1875] Ravel and Boléro won the competition, it’s just so viscerally pleasurable.”Debra Craine, The Times

“Voted for by the public via YouTube, it was anyone's guess what kind of work would win. But [1875] Ravel and Boléro, created by Taiwanese choreographer Shu-Yi Chou turns out to be fresh, funny and very sophisticated.”
Judith Mackrell, The Guardian


*公式チャンネルより引用

 その受賞は次のような新聞記事でも報道されました。

http://www.cna.com.tw/Proj_TL_Eng/Detail.aspx?Category=2&TNo=13&ID=201004050002
http://www.chinapost.com.tw/art/arts/2010/04/04/251085/Taiwan-choreographers.htm
 国内にとらわれず世界のダンス・コンペティションに応募しています。
 
 日本でもダンスと隣接するジャンル、例えばメディアアートでは20代にしてSIGGRAPHアルス・エレクトロニカという世界クラスのコンペティションに応募し入賞するケースも少なくないものです。日本の若きダンサー・振付家も世界のダンスコンペにネットなどを通じて情報を得て応募して評価を得ていって欲しいものです。

 その作品を映像でこれから紹介していきましょう。モダンベースの優れた作品たちです。



*公式チャンネルより引用


*公式チャンネルより引用


*公式チャンネルより引用

一人でモノローグのように踊る作品もあります。


*公式チャンネルより引用

アメリカで活動をしている映像もネットで紹介しています。


*公式チャンネルより引用

この芸術家は映像作品も作成してます。


*公式チャンネルより引用


*公式チャンネルより引用

 日本国内のダンスシーンはジャンルごとに分化が進み、いわゆる蛸壺状態ではないですが、お互いのジャンルがなかなかリンクしにくいという状況が起きています。また90年代から2000年代にかけての現代表現の一部がしばしば“コンテンポラリーダンス”という今日ではすっかり当たり前になった概念から扱われてきましたが、その枠組みも長い時間の経過と共にクリシェになり、さらに新しい次世代のダンスの台頭を射程に入れながら活動をしていくことも求められています。現代表現を、用意にコンテンポラリーダンスという既存の枠組みに帰着をさせることを意図せずに、いい意味でそのシンタックスにとらわれることなく“自由に例え無教養であっても”新世代の表現、それを支援する基盤を創出することがもとめられています。枠組みそのものが逆に保守的に機能しがちになることを考えるとすれば、新しい身体表現とそれを支援する基盤を創出するために“脱・コンテンポラリーダンス”ということを実践的に探究しその概念構築をすることも意義があります。
 ソーシャル・ウェブ・サービスやYoutubeのようなDigital Communityは情報の発信という意味では既存の枠組みにとらわれず情報を発信することが可能になり、ある面では表現者に新しいオーディエンスやリピーターを与えることを可能にしています。Digital Community上にある“いわゆるプロでない人がダンスするような映像”が突然数万アクセスぐらいのヒットを生み出すような現象は、次世代メディア基盤を通じたダンス・コンテンツの発信、ライブアーツ及び関連産業にさらなる展開を示唆することを可能にしてきました。
 日本のダンスシーンでは90年代以後のバレエブームの影響から、バレエ的なタッチやパフォーマティヴな作風の現代表現がコンテンポラリーダンスとして受容されてきました。その結果として“モダンとコンテンポラリーを分ける”といった傾向もしばしば見い出されるようになってきました。しかしこういった一時代前のコンテクストのみに終始することなく、例え素朴でも独創的な表現を様々な方向性で見い出すことが重要です。モダン・コンテンポラリーの「古典」と「現代」の相互を見つめながら、目の前の一時代に終始することなく長い目で新しい才能を送りだすことに意義があります。モダンベースでも優れた才能が世界で評価をされていることを考えるならば、過去の概念枠組みやローカル・マーケットの一傾向に捉われすぎることなく、新世代の舞踊と舞踊文化を構想することが求められています。