Twitter風に

@2月13日

舞踊批評家協会の2009年度の結果が決まる。その後、赤坂の国立新美術館に立ち寄る。「美術手帳」の名物編集者のレクチャーの後半パートをきく。昔、「コンテンポラリーダンス」特集の時に書いた媒体だが、それ以前にも仲間とやっていた匿名グループアートユニットの活動が紹介されたりした。その当時、丁度Dumb Typeが「S/N」から「OR」へという時期で、関西アートシーンがもてはやされていた時期だった。Ideal Copy*1のような匿名アートユニットというのも先行例としてあった。
50年代末から70年代に書けての、市川雅や池宮信夫が寄稿していた時期の「美術手帳」の方針について。雑誌の両輪は「情報」と「批評」とのこと。そこから啓蒙や方針が打ち出されたということ。いろいろな美術団体が当時立ち上がってジャンルの壁が壊れて芸術の変容が起きていたということ。当時、この雑誌には音楽や舞踊の記事も入っていて総合的な空気があった。80年代から90年代以後の情報雑誌の氾濫は、ある意味で余計な情報をふんだんに盛り込む、情報を過剰に入れ込む作戦が多媒体に踏襲されて、悪い因習ぐらいまで過剰になってしまったことから産まれてきたのではないかという話。当時、”ニューロック”が出てきて、ピンク・フロイドジェスロ・タルなどが出てきていて、そういうのはいわゆる音楽専門ではないミュージックライター(が扱わないし)意図的にそうではなくいろいろなライター、横尾忠則とかも含まれる、を起用して書いたらヒットだったとかそういう話題が続く。

「既存の枠にとらわれない」とか「確実なものを捨てる」とか「既存のアートを脱構築する」といった話題がすっかりクリシェになっていて保守的に機能しがちな昨今。むしろ40代や50代の今の中堅作家が、「”コンテンポラリーダンス”っていうのは私らが若かった80年代や90年代に出てきた概念だけど未だに若い子はそうなのね」と回顧的にちょっと懐かしそうに語る方が2010年代の現代を感じさせる。それでもかつての名物編集長のトークは刺激になった。

同館で行われていた文化庁メディア芸術祭、先端技術ショーケースにも顔を出す。メディアアートも枠組みがパターン化してきていると2000年代から言われてきているから、もう少し変化があってもいい。ポップカルチャーの展示については勉強になった。

夜は先日の小森敏・伊藤道郎の再演企画&現代作品を見にいく。

@2月14日

中華正月。FacebookもメールもTwitterも新年のお祝いのメッセージ。シンガポール、香港、東京はアジアの重要な文化集積地だ。さらに上海やマカオ、台湾などもポテンシャルが上がってきた・・というのはちょっと前までの話。今は中華世界にテクノカルチャーでも舞踊でもおされている下りも。*2
フランス語圏やスペイン語圏の友人たちが自分たちのカルチャーを重視しているのはFacebookでヴィジュライズされる生活パターンなどみればよく伝わってくる。中華系も同じ。物凄くフラットに平易に書いてしまうと、トランスナショナルでトランスカルチャルな文化状況の中から新ジェネレーションのダンスが立ち上がってくるみたいなイメージを感じる。
横浜のチャイナタウンにでもいたかったのだが、午後から現代舞踊公演。数人の踊り手の状態が非常にいい。来年で帝国劇場開幕から100年になる。洋舞100年は現代舞踊にとっても100年近い伝統ということになる。この国には現代舞踊とバレエ、日本舞踊の3つの舞踊がしっかりと根づいている。*3モダン・コンテンポラリーの新人は古典から現代表現まで幅の広い作品を生み出せるわけだがらいい作品をつくってほしいものだ。

@2月17日
「ヨーロッパのマーケットはヨーロッパのマーケットである種充足していて、紹介するアジアのコンテンポラリーダンスについてはプロデューサーの個人的嗜好で決まる」(Yokohama Dance Collection R 2010にて)なんて言葉をきくと、アジアのダンスの欧米への紹介について考えさせられる。その一方で、日本のコンテンポラリーダンスをアジアに配信していく事も重要だ。


以上、Twitter風に。でも初期のBlogはこんな風に書いていた印象があるから、原点回帰みたいな印象もある。”つぶやき”がパフォーマンス的に批評のように機能してしまう現代。デゥルーズ=ガタリは数十年前にいわゆる言説が”批評”ではなく”セラピー”のようになるのではないかとかそういういうことを往復書簡などで論じていたわけだが、つぶやきやメッセや”足跡”のようなアクセスログがある面で”癒し”のようにも機能する。

若手ダンサーがバリバリBlogやTwitterで活動を開始している。こうなるべくしてこうなるというか、もっと面白くかきまわしてほしい印象も。

*1:http://www.dnp.co.jp/artscape/artreport/law/071115_01.html

*2:Guangdong Modern Dance Festival http://www.gdfestival.cn/en/index.asp が中国では盛んなフェスティバルの一つだ。

*3:例えば舞踊批評家協会は村松道弥と桜井勤の尽力によって40年近く前に生まれた。”集団的批評眼を持ったグループ”としてそれぞれのジャンルと向かい合ってきた。http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070524