小象ババールのお話

雑賀淑子喜寿記念発表会

 雑賀淑子の喜寿を祝う発表会が行われた。雑賀は彭城秀子に現代舞踊を学び、後に小牧正英に師事する。戦後を代表するバレリーナは原点において現代舞踊を学んだ人も多く谷桃子や太刀川瑠璃子も同じような経歴を持っている。彭城に8歳でであった時に稽古場にいた5歳の少女が今日の森嘉子だ。後年二人が再会をするエピソードは知られている。雑賀自身も原点にモダンダンスを学ぶことから得ることができた経験について回想することがある。
 雑賀は戦後のバレエダンサーの中では初期にパリに留学をすることができた若者である。パリ時代にはオルガ・プレオブラジェンスカ、後にジャニーヌ・シヤラ・バレエ団で活躍するルネ・ボン、「グラン・パ・クラシック」の振付で知られるビクトル・グゾフスキー、オペラ座で教えていたネリー・シュワルツらに学んでいる。そんな雑賀が振付に興味を持つことになったきっかけは恩師ネリー・ブーシャルド女史のグループに属して活動したことだった。
発表会ではそんなエピソードを想い起させるように日本に来日をしたリファールを彷彿とさせるような「白の組曲」で幕を開け、子どもたちが雑賀の振付でそれぞれ明るい踊りを繰り広げた。またブーシャルドの作品も上演されガーシュインの音楽に沿って黒いレオタードをきた少女たちが踊る「プレリュード」、モチーフに着想得た動きのフォルムとその展開が面白い「小さな羊飼い」(音楽:ドビッシィ)が上演された。発表会のための小品たちとともに「愛の挨拶」と題された作品では長年の舞踊活動でであった仲間たち、森や石井清子らと雑賀は朗らかに踊ってみせた。さらにNHKテレビのために振付けた作品でもある「小象ババールのお話」ではポピュラーな童話をユーモラスに描いてみせた。機知に溢れるこのアーティストならではの作品主題といえるだろう。現代の若手にとってもヒントになるような愛情溢れる作品だ。
 その長年の活動を祝うために会場には花が多く贈られていたが、勅使川原三郎から贈られた花もあり勅使川原がまだバレエを学んでいた頃の逸話も想い起させた。
(1月31日 文京シビック大ホール)