今月のダンサー:09年10月 皆川まゆむさん

 モダン・コンテンポラリーの新世代ダンサーの中で次代を担うことになりそうな優れた才能が何人も台頭してきている。この所大きく活躍を見せ私が注目をしているのは皆川まゆむだ。


写真:大洞博靖

 DDD専属ダンサーとしても活動をしたり、リーボックのグローバル・インストラクター(http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000000111.html)になるなど大きな伸びをみせている。漫画が好評を博したことで注目をされた映画「昴」http://wwws.warnerbros.co.jp/subaru/#)では黒木メイサの吹き替えを担当している。興味深いのはアジア圏でもこの映画が配信されていることだ。(2009年10月3日の記事と一部内容重複するが)

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Production映像:
http://www.youtube.com/watch?v=1HYSPnySlNw
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 もともと、私は「火の鳥」(ヤーン・デュロヴチーク作品)で主役を踊った時やその時代のコンクール作品などから優れた芸術性と感覚に注目をしていたが、その時代から一段と成長を重ねシーンに大きく登場してきている。興味深いのはタップダンスからダンスを始めたという横顔があることだ。その後、多くのジャンルを経てコンテンポラリーダンスで活動をしている。
 そこで近年の活躍からこれからの展望まで話を伺ってみた。企業と社会とクリエーションを進めることなど、豊かな経験から創作活動のみならず社会に対して様々なイメージを持っているようだ。
 来年は新国立劇場で上演される近藤良平作品に出演予定ということ。是非、チェックしてみたい才能の一人だ。

Q1.映画「昴」黒木メイサさんのコンテンポラリーダンスのシーンの吹き替えを担当されたそうですが、いかがでしたか?映画をご覧になった方も多いと思うのでまず はその辺りからお話ください。

A.「昴」でのお仕事、出会いは本当にとても素敵な経験でした。武元賀寿子先生の関係で知り合ってからよく仕事をいただいている、上島雪夫さんから、『”昴”というバレエ漫画で映画を作るんだけど、コンテンポラリーダンスが大きく左右する映画なので、そこをメインに、バレエの基礎と柔軟、全ての振り映しなど色々できてメイサとも歳も近いから良いと思うんだけどやらないか』と言っていただいて、、私自身原作の大ファンで、携われるのならばこんなに素晴らしい経験はないと思い、即OKの返事をしました。なので、吹き替えを担当するというよりは、元はメイサちゃんが撮影の上で必要な基本的な部分のサポート役だったわけです。

 吹き替えを担当する事になったのも、バレエのシーン以外は上島さんの振付けだったので、シーンに使うダンスを監督にチェックしていただいたとき、『彼女でそのまま吹き替えやってくれないかな?』と、言われ踊らせていただきました。私の踊りを使いたいと言っていただけたのはありがたい事でしたね。ダンサーである私が踊る事は簡単なことです。ですがこの映画の主役は、女優のメイサなので、三ヶ月にわたるメイサちゃんとのマンツーマンで、お互い『見ている人にメイサちゃんが全部踊っていると思わせるくらいのとこまでつめよう』と決め、同時にそれはヒップホップやジャズ以外踊った事のない彼女には本当に大変で苦しかったと思います。最後には、私のダンサーとしての気持ちと、メイサちゃんの女優としての気持ちがラストシーンのダンスにとても反映する所までいけたので、本当に素晴らしい瞬間でした。吹き替えで出演させていただけて、映像の繊細な部分の中で踊るという新たな部分を知り、また役者達さんとスタッフさんと私がジャンルを超えて造り上げていく事はやはりどの現場でも同じだという事を再認識させてくれました。

Q2.タップからダンスを学びだしたということですが、「火の鳥」や現在のイメージからは意外です。踊りとはどのような出会いだったのでしょうか?

A.私の母が、小学4年生の頃『私!ミュージカルやるから!!』と突然兄弟の前で宣言したんです(笑)そのミュージカルは一般の方が参加するミュージカルだったのですが、その稽古に小学生だった私はいつもついて行っていて、毎回みんながダンスの練習してるところを見て興味がわいてきて、それがわかった母は、そのミュージカルの振付けの先生がタップダンスとジャズのクラスを持っているのをきいてくれて、もともとフレッド・アステアジーン・ケリー、当時のミュージカル映画が大好きだったのもあって『タップだったら、他にあまりやってる人がいないから』とタップダンスのクラスに行きはじめたのがきっかけです。

Q3.以後、バレエ、ジャズダンスをへてモダン、コンテンポラリーと出会っていくわけですが、コンテンポラリーダンスについてはどのような意見をもっていらっしゃいますか?「火の鳥」から上島作品まで幅の広いタッチの作品でご活躍をされていますが。

A. ん〜〜、、コンテンポラリーは本当に幅が広いですね。特に日本は、色々な形でコンテンポラリーダンスを踊っていると思います。そこが、面白い所でもありますが、、私が思うコンテンポラリーダンスは、『シンプルさ』と『可能性を探る』ものだと思います。例えば、悲しい顔、求める手。。わかりやすい動作、パッションももちろん必要なものだと思いますが、私はコンテンポラリーダンスを踊る時は、ただただ動く身体を通して、見ている側に、悲しさ、なにか求めている、とか作品の根底の部分を感じ取ってもらえるように努めたいと思っています。だからこそ、優れた身体と、作品力が不可欠なんだと思います。
そこがとても、難しい部分なんですが。。。

Q4.映画のみならず、リーボックのグローバル・インストラクターやDDD専属ダンサーとしても活躍されていますが、広くダンスを取り巻くメディアや社会について考えていらっしゃることがあれば伺ってみたいです。

A.そうですね、まずは、本当にコンテンポラリーダンスはダンスの中でも知られていないということですね。メディアの方達ですら知らない世界を、一般の方々に知っていただく為には、私の方からメディアの方々と触れ合わなければと思っています。沢山のダンサー達がそうやって取り組んでいると思いますが、とても大変な事ですね。。(苦笑)
 企業やメディアとの仕事は、それぞれの戦略がありますから自分のやりたい事がメインで出来る訳では決してありませんが、今の自分の年齢からしても当然と思いますし、お金を動かすという環境に触れる事はとても勉強になる部分があります。こうやって、私が自分のダンスや技術を通してメディアにでる事で、私というダンサーがいる事や、コンテンポラリーダンスに興味を持っていただく足がかりになり、いつか企業やメディアとコンテンポラリーダンスが一緒に様々なクリエーションをする日がくる事を願います

Q5.これからどんな作品をつくったり、どんな活動をしていきたいですか?

A.活動としては、様々なコンテンポラリーダンサーの作品に参加し、沢山の新しいダンサーの方々の感性に触れながら踊れるように動いていきたいと思っています。それと、他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも幅を広げていきたいですね。作品づくりに関して今はまだ具体的には取り組んでいませんが、色々な活動を通じて自分の発想や考えを少しずつストックしている所です。

Q6.「昴」はアジアでも大きく紹介されましたが、日本に限らずやってみたい活動はありますか?

A.私はシルク・ドゥ・ソレイユの世界がとても好きで、ありがたい事に何度か作品へのオファーもいただいたのですが、突然だったり、2年の拘束なので、良い状態で臨めるようならば、20代のうちにシルクの舞台にはあがってみたいと思っています。

今後の活動

11月19日、20日 踊りン坊侍 上島雪夫作品出演(IMAホール)
22日、23日 DDDダンスライブ ソロ出演(スパイラルホール)
12月3日、4日 BDC25周年記念公演 演出武元賀寿子(草月ホール
2010年2月 近藤良平トリプルビル 出演予定


プロフィール


写真:大洞博靖

1985年2月10日生まれ

11歳でミュージカルに出会いタップダンスを始める。その後クラシックバレエ、ジャズダンス、モダンバレエとダンスの他に芝居、マイム、歌唱なども学ぶ。その経験を生かし数々の舞台で主役・主要ダンサーを務めるほか、芝居などの振り付け、ステージングなども担当。
現在は、武元賀寿子Dance venusに所属。コンテンポラリーダンスを主に活動、日本の振付家以外にも、海外の振付家作品にも参加。又、舞台活動にとどまらず他ジャンルのアーティストとの公演や、美術館や寺や神社などでパフォーマンスを展開し活躍中。
シルク・ドゥ・ソレイユ登録アーティスト。現在、Reebokと契約、日本で唯一のグローバルインストラクター。

舞台

上條恒彦主演ミュージカル「円仁」出演 異国の舞姫
東儀秀樹&舘形比呂一主演「鳳凰伝説」出演(国立博物館、北千住1010ホール)
重要無形文化財 大倉正ノ助「如風〜inside wind〜」出演(新国立劇場
スロバキア振付家ヤン・デュローチク作品「火の鳥」 ヒロイン役(新国立劇場
・07’08’MODAFEにて 韓国人ダンサー キム.スンヨン作品出演
キム・スンヨン 日本初公演「EAST DRAGON」出演(神楽坂セッションハウス)
・08’ミュージカル”PIPPIN"出演
・08'新国立劇場 ダンスエキシビション上島雪夫作品『Flush ほとばしる時間達』 等

受賞暦

・ジャズダンスコンクール ジュニアの部 第3位
・全国舞踊コンクール モダン成人の部 第3位の2位
・バレエコンクールIN横浜 コンテンポラリーダンス部門 シニア 第1位
ハンブルグ国際文化交流奨励賞 等

振付・その他

青年座公演「かつて東方に国ありき」振付
青年座公演「なめとこ村の熊たち」(宮沢賢治原作)振付
・長崎ハウステンボス 06’クリスマスイベント「光る降る町LOVE SAINT」振付 等
・宝飾ブランド「トリロジー」日本初上陸記念イベント 出演
・CEATEC SHARPブース 「AQUOS」出演
・National 「ナノケア」新商品発表会 出演
・National 「新型ドラム式洗濯機」新型モデル発表会 出演
・TOKYO モーターショー ダイハツブース出演
シルク・ドゥ・ソレイユ・シアターOPEN記念 ダンサー出演
・TOKYO オートサロン トヨタブース出演 
中華人民共和国60周年記念パーティー ダンサー出演


写真:大洞博靖