ライモンダ:寺島ひろみ

新国立劇場バレエ団「ライモンダ」
 「ライモンダ」はプティパならではの構成きいた美しさと踊りを堪能できる名作だ。アレクサンドル・グラズノフの音楽も楽しむことが出来る。第三幕のみを上演しているバレエ団は多いが全幕を見る機会は限られている。十字軍の頃の西欧が舞台になるという壮大なストーリー性も魅力だ。中世と幻想―そして愛の物語譚である。
 主役のライモンダ役は寺島ひろみだ。その清楚な容姿とキュートな表情はいつ見ても楽しみだ。そして変更から、ジャン・ド・ブリエンヌを山本隆之、アブデラクマンを森田健太郎が演じた。寺島は特に第三幕で大きく活躍を見せ有名なヴァリエーションをはじめとする多くの見せ場をその豊かな音楽性を活かしながらきめてみせた。抑制をきかせた陶酔感、たおやかな肢体が立ち上げる薫るような官能が見事だ。山本と森田は第二幕の決闘のシーンでそれぞれ充実した演技をみせた。踊りの見せ場の多い作品だがその背後に貫かれた振付家の美意識には普遍的な魅力がある作品である。
新国立劇場 オペラ劇場)
振付:マリウス・プティパ
改訂振付・演出:牧阿佐美
作曲:アレクサンドル・グラズノフ
装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
ライモンダ:寺島ひろみ
ジャン・ド・ブリエンヌ:山本隆之
アブデラクマン:森田健太郎