早春バレエ・モダンダンスコンサート2009

埼玉芸術舞踊協会
早春バレエ・モダンダンスコンサート2009

今年の埼玉芸術舞踊協会の本企画ではモダンとバレエの作品に加えて堀登の「5vs5」を委嘱作品として上演した。バレエでは野呂修平の「Colour Variation」や由井カナ子「パ・ド・サンク」のような音楽性を大切にした明るいトーンのモダンバレエが目立った。暗い世相に対して明るさをバレエスペクタクルから立ち上げようとしているのだろう。モダンは若松美黄を中心に複数の作品をダイジェストで「DNA さいたま動物の謝肉祭」と題打つことで上演。子どもの踊りを活かした作品やジャズダンスからの影響を感じる作品が多く上演されたが、原島マヤ「変化」と吉田久木子・関口淳子「人」は芸術性で抜きんでていた。原島作品は構成が課題だが力強いムーブメントを切りだしていたし、関口はその存在感を活かしながら若いダンサーたちとのコントラストを通じて人間存在の深層に切り込んだ。
 堀登の作品は舞台左右に二列に並べられた椅子を用いながら5人対5人のダンサーたちが踊っていくという作品だ。タンゴの響きと共にダンサーの肉体がうっすらとナラティヴな世界を立ち上げるか決してストーリーのように語り過ぎないという作品だ。隙なくまとめられた作品であるが故に様式を通じた力強い主張が欲しいのも事実だ。上演の水準は確かなものであり、ダンサーたちにとっても優れた経験をもたらす作品であるように思う。
埼玉会館