雪がちらつくなか・・

 正午ごろ外出すると曇り空から雪が降ってきていた。凍てつく冬の日である。谷桃子バレエ団創立60周年記念の「白鳥の湖」を見に行く。余裕があれば3キャスト全日程制覇をしたかったのだが、初日のマチネのみ。年頭早々にダブルヘッダーで長時間バレエを見るというのを楽しみたかったのだが。次代を担うダンサーとして注目される緒方麻衣・三木雄馬組でみた。


谷桃子バレエ団創立60周年記念公演1
白鳥の湖」全4幕

 谷桃子バレエ団は創立60周年を迎えた。その最初のプログラムは「白鳥の湖」だ。特に緒方麻衣の3幕のオディールに注目したい。艶やかな黒い衣装をまとって溌剌と踊る姿に王子(三木雄馬)が魅惑される。若々しい二人の肢体がさっそうと宙をきる。闇の舞姫と王子によるポピュラーなグラン・パ・ド・デゥの成立に新人バレリーナならではの若々しい女の媚態とこのところ伸びてきている男性ダンサーによる演技をみることができた。緒方は4幕でもオデットとして優れた表現をみせた。ウラノワのような精神性を確立することが課題だが優れた資質を感じとることができる。
 谷版はプティパ=イワノフ版に基づいている。奥ゆかしく深みのある踊りの持ち味を引きだしたダンス・ドラマともいうべきヴァージョンだ。戦後バレエならではの演出や構成もみてとることができる。ロンシャン・バレエ(上海バレエリュス)からの流れを汲む小牧正英に対して戦後の若者のバレエを構想した。小牧版や第一次東京バレエ団とはまたことなるヴァージョンを目指した当時の若者の姿勢を感じとることができる。美術は実験工房にも足跡を残している橋本潔だ。その時代を感じさせる。演奏は東京ニューシティー管弦楽団、指揮は福田一雄。ストーリー性を音楽の側からも切りだすような演奏とこのヴァージョンならでは編曲で楽しませてくれた。戦後バレエを担ってきた才能たちによる1つの集大成である。
(マチネ 新国立劇場 中劇場)
芸術監督:谷桃子
オデット・オディール:緒方麻衣 王子:三木雄馬