イブイブ(23日)からイブ(24日)にかけて・・

海外からもくるみ割り人形のニュースが入ってくる。

小リンク集;
http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20081219


悲報は続く。

オリガ・レペシンスカヤ(Olga Lepeshinskaya 1916-2008)が今月20日に他界をしたようだ。92歳だった。ウクライナキエフ生まれ。33年からボリショイ・バレエで踊りスターになる。舞踊学校時代はオリガ・サファイアの師でもあるセミョーノフに師事している。日本バレエ協会発足へとつながる1957年のあのボリショイ・バレエ公演が新宿コマ劇場で開催された時に来日をしており、その時に踊る姿を覚えている人も少なくない。私は「ドンキホーテ」のキトリや「眠れる森の美女」のオーロラを踊るレペシンスカヤの映像を覚えている。「赤い芥子」のポートレートを見たときはその時代を感じたものだ。日本のバレエ教育にも影響を与えたバレリーナである。
関連記事:

NYTimes By Anna Kisselgoff
http://www.nytimes.com/2008/12/22/arts/dance/22lepeshinskaya.html
英Guardian
http://www.guardian.co.uk/stage/2008/dec/21/bolshoi-ballet-olga-lepeshinskaya-russia
国内:
http://mainichi.jp/select/person/news/20081221ddm041060104000c.html

 23日:東京シティバレエ団の「くるみ割り人形」を見る。今年のシティバレエ団はラインアップが充実。今日は金平糖を橘るみ、王子を黄凱、クララは志賀育恵、そしてくるみ割り人形をCho Min Youngが踊った。(初日・二日目も注目をされているダンサーたちが出演している。)いつもと同じ版だというが、いつもはクリスマスシーズンということで暖かくアットホームにまとめているこの団の”くるみ割り”がそれだけではなく、舞台全体としても冴えてみえた。特に1幕の子どもたちの細かい描写や雪の構成などは例年と違うように思えた。2幕は若手スターメンバーを大きく起用し見ごたえのある内容だった。
 中でも楽しみにしていたのは男性舞踊手として充実をしてきている黄凱と橘るみの踊り、そしてオーストラリアでの在外研修を経て日本で踊りだしている志賀育恵の現在だ。志賀はオーストラリアバレエ団での活動が活きてきているのか一昨年より表現力が増してきている。Cho Min Youngと踊ると二人の間にグローバルでAsianなテイストも滲み出てくる。同じようなフレーズを踊っても格段の進歩を見ることができた。ラストは橘が華やかで可愛らしい金平糖の精を描いてみせると黄凱がクールな演技とシャープな踊りの表情でまとめてみせた。共にこの団を代表する踊り手たちの演技に客席は大きく沸いた。
 近年ではコンテンポラリーダンス振付家を起用した試みで話題をあつめるなどこの団の昨今の活動は話題になることが多い。(来年春のこの企画の振付家は以前にもまして話題をまきそうなラインアップだ。)次世代のダンサーたちも次第に登場しだしており目が離せない現在だ。今日は出演していない小林洋壱は先月上海でヤンヤン・タンと踊ってきたようだが、アジアの様々な地域を経てきている若手スターダンサーの間に立ち上がる同時代性も個人的なものかもしれないが気になり興味深くも思えた。*1敏感にアンテナを世界に張り巡らせ、次代をリードしていく才能たちとどのように活動を展開するか、安達悦子や中島伸欣らが若手ダンサーたちと切りひらいていく道筋と送りだしてくるバレエに期待がかかるところだ。

東京シティバレエ団 「くるみ割り人形
(ティアラ江東 大ホール)
クララ:志賀育恵
くるみ割り人形:Cho Min Young
金平糖の女王:橘るみ
コクリューシュ王子:黄凱
ねずみの王様:堤淳
ドロッセルマイヤー:青田しげる

24日:

 森嘉子の「My Road vol.10 うず潮」をゲネプロだがみることができた。「くるみ割り人形」も良いかもしれないが、聖夜はやはりゴスペルである。冒頭、高田系ならではの舞踊詩的な作風をもちいながら森は波打ち際を描いていく。そして響き渡る黒人ならではの歌声の中でアフロダンスからのテイストも感じさせる森ならではのアメリカン・モダンダンスへ。森の舞踊を考えるときに書かすことができないのは黒人文化の持つ哀愁や感情の深みに対する視線だ。戦後アメリカを経た多くの踊り手たちがグラハム・テクニックなどをもちいながら実存や自我という問題系をなぞり続けるのに対して、森は明るく朗らかに自由と愛、そして人生への賛歌を肉体から発し続ける。そのゆるぎない姿勢が見るものをつかむのだ。


森嘉子モダンダンスカンパニー公演
「My Road vol.10 うず潮

ゲネプロ 俳優座劇場)
構成・振付・出演:森嘉子

*1:オーストラリアも中国、そして韓国はそれぞれに優れたバレエ団を持っている。