佐藤俊子、石井智子:世界舞踊祭より

世界舞踊祭という公演がある。半年前に佐藤俊子によるオリガ・サファイアの「とんぼ」を見ることが出来たのはこの催し物だ。いつも世界の民族舞踊や舞踊史的に興味深い作品などが並ぶ興味深いセレクションである。
年に1度のイベントなのだが今回は会場の赤坂区民ホールの建て直しなどが重なって今年は2回あった。次は来年は会場改築中でなしで再来年以降を予定しているようだ。
発想の原点はオリンピックということで、オリンピックの夜に様々な民族の芸能が上演されることからヒントを得ることでこの会ははじまり第一回目は長野オリンピックと重ねて行われた。以後、港区で定期的に開催されている。


世界舞踊祭

今回の世界舞踊祭も貴重な踊りが集まった。イサドラ・ダンカンの作品集は定評のある佐藤道代が踊った。ダンカンの1900年代から1910年代の作品である。「蝶々」(1901)は赤い蝶になった佐藤がショパンに沿って舞うというもので、「ハープ・エチュード」はハープの旋律に沿って踊られる音楽を大切にした静かな曲だ。「バラの花びら」(1912)は花びらを手にいっぱい持った踊り手が現れブラームスの曲とともに舞台空間に時折撒きながら踊るという美しい作品だ。そしてさらに花束が舞台に中心に据えられると「アベ・マリア」(シューベルト曲)が両腕を大きく広げた踊り手によって踊られた。ダンカンというとテクニックがエネルギッシュな印象を思わせるのだが1914年に踊られたこの作品は華やかな舞台空間を活かした静かな作品だ。
続いて佐藤俊子がオリガ・サファイアの作品を上演した。ショパンにそってチュチュをきた女性が踊る「ワルツ」(ショパン曲)、チャルダッシュを踊りそうな民族的な衣装を着た女性がきびきびと踊る「ピチカート」(ドリーブ曲)と続いた後、最後を締めくくったのは「バヤデルカ」(ミンクス曲)だ。ロシアでセミョーノフに当時学んだ振付を東京に持ってきた大切な作品である。佐藤自身が悲しいときにいつも踊ってきた演目でもあるという。緑色の衣装を着た踊り手が1シーンの踊りを描くのだが演技は当時を感じさせもする。
スペイン舞踊では石井智子が「ラ・ビダ・ブレベ」を披露した。石井は初見だが丁寧で表現力のある踊り手である。群舞の構成も見事で赤い踊り手たちが広がって踊った「アストゥリアス」も喝采をあつめていた。優れた才能でありこれからに注目したい。モダンダンスは内藤和江だ。「仰ぎ見よこの歌声」や「月の涙」に見ることが出来るようにしっとりとしたソロダンスが見事な作家である。群舞作品は構成に変化が出せると良いと思えるが明るい作風には共感を持てた。
その他にもタイや中国の民族舞踊、そして日本の「剣舞」などなかなか見ることができないダンスが数多く披露され会場は盛り上がりを見せていた。
赤坂区民ホール)


■今日の1日

東京は冬めいてきたことを示すようにメトロに暖房が入った。