わびすけ

 新世代のアーティストの表現が印象的な会だった。冴子と菊地尚子はそれぞれ得意な表現で充実した演技をみせていたし、宮本舞も自然体で好感を持てる仕上がりだ。ヌーヴェルダンスなどの影響を感じさせる作品がこのところ多かった松永雅彦も等身大でややこれまでの印象を変えるような印象の作品を送り出していた。飯塚真穂はかつては先週ソロパフォーマンスを踊った内田香と同じ舞台で踊ることが多く内田・飯塚といわれていたほど芸術性が高いアーティストでもある。このところ次世代育成をかねてか新世代を数多く起用したいわゆる群舞的なクリシェに陥らない丁寧なタッチの作品が多かったのだが、いつもと異なったダンサーとの公演で触発されたのかいい表情をみせていた。飯塚と活動を共にすることが多い松本直子もフランスから帰国し健在ぶりをみせていた。松本は金井芙三枝舞踊団のラストを彩ったダンサーたちの中では山中ひさの同様に明確に自身のカラーを持っている個性的なアーティストである。実は矢作聡子の「ダリ的リアリズムの薔薇」の初演メンバーだったりと舞台経験も豊かなアーティストだ。ベテラン達の中では池内新子の若々しい立ち姿が池田素子の姿と重なり、ここ近年でも突出した踊りをみせていた。
 いわゆるコンテンポラリーダンスのファンの中では江原朋子のアングラっぽさに魅かれその舞台に通う人は少なくない。この公演でも高瀬多佳子、河野潤と江原がサングラスで70’s風にはじけていた。こういう舞台をみているとマニアにファンが多い江原の仕事の位置も他のそれぞれ活躍をしてきた作家たちの作風と比較しながらみてみることができるし、江原以外の様々な作家と出会っていくきっかけになるのではないか。


わびすけ舞踊倶楽部Vol.2 在外研修員コンテンポラリーダンスの会 公演
「ゲノムの本 −The Book of Genome SCIENCE 科学/神話 MYTHOLOGY」

(シアターχ)