老松、現代舞踊公演

 昼間はビジネスマンでいっぱいの大手町ですごす。昔の舞踊批評家には新聞社の文化担当など社会人としても業績のある人が多かった。蘆原英了も光吉夏弥も大学を卒業した後はそのまま舞踊学者になったため現代とはその辺りが若干違う。日本の舞踊批評家はフルタイムで仕事をしてもそれだけでは生計を立てられないということが多い。しかしNew York Timeshttp://www.nytimes.com/ )ぐらいになるとフルタイムで食べられる。日本で数少ない例外は「時事新報」時代の永田龍雄先生で、この頃の永田先生は舞踊批評を書いているだけで食べられたらしい。永田先生はこの意味でもすごいかもしれない。ゆえにダンスライターにとってはいわゆる企業文化やビジネス的発想も重要になることもある。読売新聞のすぐ近くのカフェで仕事をしていたのだが普通にやることをやっていても緊迫感ある空気が心地よい。皇居の横ということもあり、大手門や帝劇を遠望しながら散策をする。空はどこまでも青く帝劇がよく見えた。
 午後、財団法人日本舞踊新興財団( http://www.nihonbuyo.or.jp/ )の「新春につどう」という集いに出席する。会場は経団連会館ダイヤモンドホールだった。経団連ホールは新年ということで、新年会や政財界の集まりがこのところ連日のように続いているようだ。しかし残念なことにこの経団連ホールはあと数年後にはなくなってしまうという話を臨席した人から聞いた。会場には和装・洋装をした人たちが集まっている。戦前の藤蔭会の写真を見ていたら同じように洋装をした人たちが帝劇のホールに集まって新舞踊運動の実演家たちと一緒に集まっているというショットがあった。そんなことをふとイメージしたりした。新年の挨拶の後、御祝儀・歳旦舞踊として常磐津「老松」が西川扇蔵によって披露された。財団の国内外の活動が紹介されていたのだが、興味深いのは、日本舞踊の海外公演の関係で国際交流系の組織や官公庁の人が多く挨拶をしていたことだ。日本の官僚や企業人にも日本の舞踊文化を知ってもらうことは重要であり、彼らにも解ってもらえるようなコンテンツをつくることの重要性を感じた。ゲストとして浅香光代も挨拶をしていた。
 夕方から新国立劇場へ。屋上庭園で一服をする。昨日のセシオン杉並もカフェテリアがあり、空中庭園のような空間を楽しむ事が出来る空間で休憩をとっていた。夜は現代舞踊公演。水準の高い公演だった。今年は年頭に充実した現代舞踊を続けざまに見ることが出来て幸せである。


平成19年度文化庁芸術団体人材育成支援事業 現代舞踊公演

平多利江「Cont[act]」
萩谷京子「天上のプロローグー隻翼の天使たちー」
真船さち子「唐人お吉の場合」

掲載済み:オンライン・プロフィール参照
(新国立劇場 中劇場)
主催:(社)現代舞踊協会